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[コメント] 愛のむきだし(2008/日)

トッピング満載のサブカル・デコレーションケーキ。しかも贅沢にホール買い。甘くて酸っぱくて、もうお腹いっぱいです。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 街で偶然、ありえないシチュエーションで出会って、ひと目で恋に落ちた女のコが自分のクラスに転校してくる。ひょんなことからそのコとひとつ屋根の下で暮らすことになり、制服姿で「お兄ちゃん、起きてぇ」なんて言われて一緒に通学する。それは私たちにとって、いつか見た夢だったか、古いコミックの断片だったか。

 加えて、パンチラ、チア、童貞、格闘、宗教、百合、緊縛、監禁、リストカット、トラウマ、日本刀……それらのワードはすべてこの10年の間に“萌え要素”という名の下にエロに変換されて消費されてきた。かつて崇高な理念であったはずの“サブカル”はそのまま「美少女が○○」の○○に何を挿入するかというクロスワードパズルにとって代わられ、メジャーシーンとの境界線を失って大衆娯楽のジャンルに堕した。いや、堕した、なんてそんなネガティブなものじゃない。いまや、オーケンもみうらじゅんもQJもみんな大メジャーで、STUDIO VOICEは休刊したのだ。

 はたして、エロゲとエロ動画が溢れかえる現代、私たちは勃起と射精に愛と勇気を必要としない時代を生きている。手軽に気持ちよくなれるんだったら、傷つきたくないし面倒なプロセスを踏みたくもない。草食系男子気取ってオナニーにふけっていたほうがよっぽどマシな、そんな時代を私たちは生きている。

 そんななか、園子音はバケツ一杯分の“萌え要素”のなかから愛を抽出し、むきださせるという非常に困難な作品をつくった。そして、それを見事に形にしてみせた。“萌え要素”を実体化させ、私たちを勃起させてみせたのだ。

 と、なんかウダウダ言っておりますが、本題は何かというと、満島ひかりが超スゴくいいということです。超萌えるし、超ヤリたくなる美少女がカンペキに現出していたということなのです。高度情報化社会によって引き剥がされた私たちの(もういいや、私の、で)海綿体と恋心をふたたび結び付けてくれたということなのです。

 ストーリー的にはテーマを語り尽くせているとは到底思えず、特に肥大化した新興宗教団体「0教団」の恐ろしさは、すべてコイケの卓越した個人能力のみによってしか表現されていないし、そのコイケの最期も主人公への共感や同属意識についての描写が不足していて唐突な感は否めず、さらにその「0教団」を映画が否定する根拠も「新興宗教だから/詐欺団体だから」というステレオタイプの解釈しかなされていない。本来なら、それにすがる人々の心理や時代性にまで踏み込んだうえで何らかの克己を描くべき問題なんだろうと思うんです。ヨーコが錯乱したユウに愛を叫ぶ場面だって、よくよく思い返してみれば、なんで? って思うし。

 だけど、私はもう気付いてるんです。まるまる4時間かけてむきだされた愛、愛にほだされてるんです。愛に理屈や裏付けなんて必要だっけ? 気持ちよきゃいいんじゃない? ほんとにその通りだと思ってしまっているんです。だって満島ひかりが理屈抜きにかわいいんだもの。

 そうだ。書を捨てて、町へ出よう。女装して、盗撮して、いつかあんな素敵なオニャノコと出会うんだ!

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)moot chokobo[*]

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