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[コメント] 西鶴一代女(1952/日)

気の毒なお春(田中絹代)をみながら思った。女が幸せになるために必要なものは魔性ではなく、したたかさ。
きわ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ここまで見事に転落していく原因はなんだったのか。二つほど考えが浮かんだ。ひとつは望んでも居ないのに数多の男を惑わせてしまう生来の魔性。それといざと言うときにNOと言えず、したたかになりきれない優柔不断さ。

扇子屋の夫に死なれた後、奉公へ上がった先の旦那。お春が島原の女だったと知るや「タダで傾城買いができる・・へへ」と目の色を変えて手篭めにしようとする。ついさっきまで情の深い生真面目な男だったのに。ここまでコロリと男の目を変えてしまった理由はやはり身分なのだろう。「お殿様の生母」から「廓の女」への意識の違い、明らかな差別の他にないだろう。三船敏郎に冒頭で叫ばせた「身分などなくなり自由に恋ができたら・・」という台詞がこの辺りで効いてくる。なんにしろ、どちらの身分も本人が望んでそうなったわけではないのに。それを招いたのは自身の性質のせいでもあるとはいえ、あまりに気の毒な人だ。ああサディスティックな監督。そんなに田中がかわいいか。ああそうだろうとも。なんであんな地味で土臭くて芋っぽいお雛様みたいな人が、あんなに色っぽく撮れるのか。心底田中絹代という女に惚れちゃってた男にしかできないよね。この作品の彼女が、溝口映画の中で一番綺麗で上手いと思います。

ぜんぜん関係ないけど、この映画で田中がよくやる気絶。あれ便利だな。とりあえず行き詰った時になよなよ・・と突然倒れる。しかも怪我しないように、あくまでしなしなと。あれいーなー。仕事でしんどいときとか、あのワザ使えたらいいのに。(08/11/25 CATV)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)りかちゅ[*]

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