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[コメント] 静かなる対決(1946/米)

アビリーンという町は、牧畜業の集積地だ。牧童たち、開拓民、商人を中心とする町民、という三者の対立が描かれる。エドウィン・L・マリンは多くの人物を的確にさばき、かつ、瞠目する画面も盛り込みながら、水準以上の作品に仕上げている。
ゑぎ

 邦題はフォードの『静かなる男』にあやかったものだろうか?本作の日本公開は、1952年12月。フォード作は1953年3月公開のようだが、全米公開は1952年9月とのことなので、宣伝部がタイトルをつける際に、意識した、ということも考えられる。(もっとも、黒澤の『静かなる決闘』は、1949年3月公開なので、黒澤作品の影響が大きいのかも知れませんが。)

 さて、冒頭字幕で1870年と出て、アビリーンの紹介がナレーションで入る。本作の原題は『Abilene Town』なのだ。主人公のランドルフ・スコットは、意外にも教会のシーンで登場。ロンダ・フレミングも横にいる。フレミングは雑貨屋の娘。父親は、スコットを町の保安官(タウン・マーシャル)に任命した町長でもある。町には郡の保安官もおり、エドガー・ブキャナンが演じるが、いつも通りの安定したコメディパートだ。ブキャナンはトランプ好きで、仕事そっちのけでトランプをしている。

 登場人物をもう少し紹介すると、開拓民の代表者はハナベリーという名の爺さん、エディ・ウォーラーと、ロイド・ブリッジス青年。サルーンの経営者・チャーリーは、牧畜業者とつるんでいる悪役でリチャード・ヘイル。ヘイルに雇われているガンマンをジャック・ランバートが演じるが、本作のランバートは、なかなか目立つ良い役だ。そして、もう一人のヒロイン(というか真のヒロイン)がアン・ドヴォラックで、歌手というか女優というか、サルーンの舞台で3曲唄うのだ。なので、結構ミュージカルパートも充実していると感じられ、この部分でも本作の満足度は高い。ドヴォラックは『暗黒街の顔役』から14年後ぐらいだが、本作の方が綺麗に見えるし、ほとんどのシーンで脚線の露出も多く、実に良い役。彼女の代表作と云うべきではないかと思う。

 あと、音楽では、開拓民のテーマソングとして「リパブリック賛歌」が印象的に使われる点も特記しておきたい。開拓民の一団の登場場面、農地にスコットが訪れる場面、ラスト、サルーンの前に行進する場面。随所でリパブリック賛歌が合唱されている。

 ただし、ラストの牧畜業者たちと開拓民+町民の対決は、夜のシーンで終始しており、フィルム状態がよろしくないこともあり、かなり暗い画面で見辛かった。こゝは玉に瑕か。尚、必要最小限の暴力(銃撃)で解決することを志向しているので、この邦題、という見方もできるが、その割には、多くの殺人が行われる。「静かなる対決」は云い過ぎのように感じられるということだが、エンディングは、『静かなる男』に通じるところがある。対決が落ち着いたあと、ブキャナンが、周りにトランプを誘うのだが、二組のカップルが首を横に振る。二組とも、この後することは、勿論トランプではない、ということだ。これには、『静かなる男』のエピローグを想起させられた。これは映画の至福。

(評価:★4)

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