[コメント] デッド・エンド(1937/米)
ピケ張って殴られたとおでこの傷を見せるシルヴィア・シドニーは左翼作家リリアン・ヘルマンその人だろう。彼女の理想が水木洋子や田中澄江に多大な影響を与えたことが、この優しい作品から伝わってくる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作の主役はデッドエンドキッズ(本作で結成されたとのこと)であり、彼らは生き生きとしておりかつ救いはない。喧嘩しかけるときの葬送行進曲の口笛が素晴らしく、冒頭の彼等を批難する老人の物真似や、金持ち少年連れ込むときの門柱の照明の球の落下がいい。弟が捕まるシルヴィアへ刑務所のコネを紹介する辺りの世情の認知度が侘しい。 次の主役はボギー。母親との再会が哀しく、ビルの谷への落下は本作のベストショットだ。相棒のジュークボックスのギャグと「誰にでも間違いはある。だから鉛筆に消しゴムがある」というジョークがいい。
シルヴィアは観察者であり、デッドエンドキッズやボギーを見て、こういう連中はどうやったら救われるのだろうと悩む姿を映画は刻んでいる。チャップリンとは別の方法論でもって、下層階級をリアリズムで詳述するのだった。このイーストエンドの貧富混交のセットのような現実があったのだろうか。マンションの門番の青年が辛かろうという描写が繊細だ。
シルヴィアの、本当は好きだが金持ちの娘と一緒になると勘違いしているジョエル・マックリーへの夢物語がいい。金持ちの青年で私を好きだと云ってくれるが私は彼が好きかどうか判らない。前後関係なにもなく出てくる台詞で、彼女が嘘をついているのが観客には判るしジョエルにも判る。自分のためを思ってつかれる嘘だとも判っているのだった。
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