コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] スラムドッグ$ミリオネア(2008/英)

野暮ったくて濃厚なタミル映画が、そのエキスをそのままにスタイリッシュに変身!ラストに添えられたインド映画ファンへの贈り物に1点プラス(ラジニ兄貴のカメオがあれば更にプラス1点だったなぁ)。
Lacan,J

 今年のアカデミー賞他各種映画賞を席捲した話題の映画です。冒頭から警備員より逃れスラム街を疾走する子供たちを追う躍動感溢れる画面が素晴らしい。ダニー・ボイル節炸裂です。これにインドの小室哲也(笑)とその昔紹介されたこともあるラフマーンの音楽がスピード感を加速する。

 スラム育ちで携帯電話会社のお茶汲みをしている若者がクイズ$ミリオネアに出演。周囲の予想と反し最終問題まで勝ち残るも不正疑惑を掛けられ警察に連行され拷問を受ける。そこで何故答えがわかったのかを説明するという方便で、幼少期から現在までの紆余曲折の軌跡が彼の口から語られるという流れ。

 ストーリー展開だけを追うと、非常に雑でご都合主義。突っ込み処満載のため、そこに引っ掛かってしまうと映画を楽しめないだろう。しかし緩急メリハリの利いた図と要所要所に挿入される音楽に身を任せれば非常に心地よい。下手な演出や細部への拘りは、こ うした特徴が殺されてしまうので、これはこれで正解だと思う。また一部で言われている、貧困層というインドの社会問題を提起しているというのも、この映画には荷が重過ぎる。あくまで単なる娯楽作品なのだ。

 その昔「ムトゥ踊るマハラジャ」を体験し、タミル映画のどうしようもない野暮ったさや濃厚さの中毒になった者からすると、この映画はタミル映画の持つそうした特長を含みつつ、贅肉を削ぎ落としスタイリッシュに仕立て上げた逸品だ。 そしてラストにはインド映画を愛する者への贈り物も忘れてはいなかった。

 インド映画は長尺で、全部見通すのにはエネルギーがいる。この映画はそのエッセンスを2時間弱で体験できるという意味でも素晴らしいと思う。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)MM[*] 狸の尻尾[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。