[コメント] チェ 28歳の革命(2008/米=仏=スペイン)
戦闘シーンは結末を見ることなく常に寸断され「勝」も「敗」も描かれない。そこに革命軍の勇姿もなければ、まして伝説の英雄として彼がまつりあげられることもない。多数の戦士のなかの一人として散文的に描かれたゲバラは、我々に「何か」を伝えていただろうか。
もちろん、不屈のヒーロー物語を期待していたわけではないが、突出した英雄として描かれないベニチオ・デル・トロ演じるこのゲバラもこれはこれでカッコいい。しかし、このゲバラの存在感は、俳優ベニチオ・デル・トロが醸し出す彼自身の迫力でしかない。
安易な英雄物語を避けるためドラマ性を排除したのであろう。であればカラーで展開されるゲバラらの侵攻パートと、セピアで密に詰め込まれる国連総会のパートの対比にこそ、英雄物語ではない「何か」の物語が仕組まれるべきだった。
「何か」とは、時代であれ、国家であれ、南北問題、東西問題であれ、あるいは誰かの個人的心情でもよい。いまだ我々が、想像しえなかった「新たな価値」ならもっと素晴しい。残念ながら、この映画には、何のメッセージもなければ、いかなる価値の提示もなかった。端的にいって、製作者たちの意識過剰による失敗作である。
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