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[コメント] デトロイト・メタル・シティ(2008/日)

予告編を見て、これはひょっとして大変力のある、大変良くできた映画になっているんじゃないかと思って見に行ったところ、あんまりよくできてはいなかったが、パワーはある映画になっていた。
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







三十二歳のわたくしですが、テーマとも、バンド音楽ともまだまだ距離を置いたり、ケタケタ笑ったりでおしまいにできるほど大人ではございません。代官山オシャレファックなカフェで主人公が撃沈するシーンとかもう、その記号性だけでなんだかいたたまれない気持ちになる。インディーズ大戦争のシーンとか、ラップバトルなんか腹かかえて笑ったし、ロケンパンクのお姉ちゃんかわゆす、これもやっぱりイコンだけでいただけます。

邦画エンタメにありがちな恋愛・家族・青春コーティングは安く、それが映画のレベルを露呈しているのは確かであるものの、問題はそれをやってしまっていることではなく、突き詰められるべきジャンルやファッションをめぐる文化と価値観の差異というテーマ、でも、その差ってホントに差があるって言うぐらい大袈裟なもんなの?というアンチテーゼが、六分目で終ってしまっていることかと。映画化なんだから、原作がどうだろうと前向きなベクトルを持っていてもよく、でも、その前向きは「みんなの夢」なんて嘘八百にすり替えられるんではなくて、「ジャンル間の壁なんてぶっ壊してやる!」という気概に集約されるべきだったと思う。

そういう意味では、この映画で一番重要なシーンは、バトルの果てにジャック・シモンズ先生からの一子相伝が行われたにもかかわらず、クラウザーさんがラズベリー・キッスをかましてしまうくだりで、このシーンの、こんなレベルのコメディでのたかだがギャグに過ぎないはずのくだりにもかかわらず漂ういたたまれない気まずさこそ、このネタの核心であるはずで、映画はそれを出しておきながら、まったく回収できずに、チャンネル切り変えてしまうのだが、どうせこの映画を見た人はこのシーンに一瞬でもとどまって欲しいと思う。なぜなら、あの気まずさ、シモンズ先生も立場がない気まずさこそは、俺もあなたも誰もが内在させている体臭なのだから。

そもそも松雪泰子の女王様が見られれば何でもいいと思って見に行ったんです。実際見てみたら、松雪泰子はイメージに反して、こういうキャラクターの遺伝子がビタイチない人だということが解った。がんばっている「演技」とは思ったものの、そういう遺伝子は感じなかった。ま、なくて当然なんですが。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)秦野さくら[*] Myurakz[*]

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