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[コメント] 叫(2006/日)

ホ、ホンカク、ミステリー、だと?
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 赤い服の女、黒いコートから落ちたボタン、黄色い電気ケーブル……冒頭から次々に提示されるアイテム群はまさに本格ミステリーの匂いがプンプン。黒沢清がついに「降り」てきたかと期待してしまう。そしてその期待は、ものの見事に裏切られた。ぐへぇ。

 ミステリーというのは端的に言えば、「情報の出し入れ」がすべてである。あらかじめ設計されたトリックの内容を順繰りに公開してゆくことによって観客は徐々に作品世界を理解してゆき、謎が完全に解かれたときのカタルシスに酔う。無論、そんな段取りだけがミステリーの魅力ではないが、「黒沢初の本格ミステリー」と銘打たれたからには、それくらいの基本サービスはしてくれると思っていた。

 ……甘かった。何しろ謎はほとんどが、いきなり登場した人間のセリフによって明らかにされてしまう。工夫もへったくりもあったもんじゃない。

 いかにもミステリー然とした導入で始まり、乱雑なプロセスによって謎が解かれ、たどり着く結論も曖昧なまま。そして「謎解き」以外のシーンはいつもの映像世界とギャグのオンパレード。これじゃまるで(自主規制)してもらいたくて高い金払ったのに、(自主規制)ばっかりで(自主規制)してくれない歌舞伎町の(自主規制)店の顔だけがカワイイ女のコみたいだ。そんな黒沢清に、私はぼちぼち飽きてきた。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)煽尼采 ペペロンチーノ[*] Master[*]

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