[コメント] アデュー・フィリピーヌ(1962/仏=伊)
2人の名前はジュリエットとリリアーヌ。ミシェルは、初めからナンパ目的だ。どちらとでもいいから、うまくやりたいと思っているだけ。ジュリエットとリリアーヌも、そんなことはお見通し。しかし、ミシェルは、約2か月後に兵役に就かなくてはならない。この3人が、パリからコルシカ島のバカンスを通じて様々な体験をする場面が、ほとんど脈略なく綴られる。
パリのシーンでは、ジュリエットとリリアーヌが出演した箒(モップ)のCMのラッシュ視聴会(これが酷いシロモノ)だとか、リリアーヌがCM制作会社の社長パシャラに売り込んで、ミシェルが撮影を任された冷蔵庫のCM撮影場面なんかも面白いけれど、何と云っても、パリの街頭をジュリエットとリリアーヌの2人が歩くシーンがカッコいい。ウエストショット、ニーショットを交互に繋ぎ、横移動で延々と見せるのだ。
しかし、本作が本当に面白くなるのは、コルシカ島に3人が集合してからだろう。このリゾート映画になってからの後半が絶好調だ。カッコいいカット割りが続出する。前半は無かったジャンプカットも出て来るし、ディゾルブ繋ぎと暗転繋ぎも駆使されて、簡潔なシーン構成がバッチリ決まって行く。それでいて、何とも云え無い情感を創出している。良い場面は沢山あるが、その中でも、最初はジュリエットとミシェルが踊っているのだが、リリアーヌが正面カメラ目線で、挑発するようにダンスするショットを挿入し、続けて、彼女がミシェルの胸に顔をつけて踊るショットが繋がれる場面がいいと思った。それをテーブルから見るジュリエット。さあ、果たして、ミシェルはどちらかをモノにすることができたのか(いや2人ともか)、というのは、実は明確には描かれていないのだが、観客の多くは、多分こうだろう、という推測ができるように描かれている。
ラストはミシェルが兵役(召集)のため、船に乗るシーンだが、このシーンの客観視点もいい。船が離岸し、徐々に動いて行く様子を、ちょっと引いたカメラ位置のショットで、これでもか、というぐらいカットを繋いで見せる。堤防を走るジュリエットとリリアーヌ。これぞ、ヌーヴェル・ヴァーグの宝石だと思う。
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