[コメント] マッチポイント(2005/英=米=ルクセンブルク)
筋が本当に面白い。ドストエフスキーの『罪と罰』を目立つように出し、設定やシチュエーションの一部を重ねて、ミスリードを誘うという手法は斬新。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ドストエフスキー好きにとっては「壮大な釣りでした(笑)」といわれている気分になるのだけど、これは筋が上手すぎて感服するしかないので★5。
細かい状況や設定は違いながらも、『罪と罰』と同じモチーフが多く挿入される。 例えば大きなところでは老婆殺し。老婆ともう一人女を殺すところ、物取りと見せかけるのも同じ。物取りと見せかけるために奪った品で足が付きかけるのも同じ。 だけど、それらが全て巧妙に逆の意味を持った配置になっている。
『罪と罰』では老婆を殺すつもりが、うっかり無関係の老婆の妹を殺す。 この作品では、老婆じゃない方を殺すつもりで、故意に無関係の老婆を殺す。 『罪と罰』では奪った品から足がつくが、この作品では奪った品が原因で救われる。 巧妙な殺害方法は『罪と罰』を愛読する主人公が考えたのだ、という筋だけで面白い。
『罪と罰』のラスコーリニコフは自分の思想に苦しみ葛藤し人殺しをし、最終的には捕まる。この物語の主人公はものすごく陳腐な理由で人殺しをし、たまたまテニスコートの向こう側にボールが落ちたというだけで捕まらない。ボールがこちらに向こう側に落ちるという抽象概念と、指輪がこちら側に落ちるというシーンの対象性も見事。
あと、ヒロインが妊娠したときの 「なんで妊娠したんだ!」「あなたが危険日に避妊しないからよ!」というやりとりに爆笑した。ウディ・アレンの描く、こういうやりとりが好きだ。
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