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[コメント] 灼熱の勇者(1955/米=メキシコ)

上映時間の大部分を占めるアンソニー・クインモーリン・オハラのロマンスにさしたる魅力があるわけではなく、クインとマヌエル・ロハスの知られざる関係なんていうのもどうでもよい。というわけで見所となるのはやはり草原とラストにおける闘牛シーンだろう。
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闘牛場の闘牛シーンは(エンディングを飾るロハスの闘牛を除いて)多くが超ローアングル・ロング・ほぼフィックスのショットで綴られている。要するにこれは闘牛士の視点でもなければ闘牛場の観客の視点でもなく、フィールドに埋められた定点カメラのごとき視点であり、それによってリアルかつクールな迫力が生み出されている。このようなシーンでは、迫り来る牛をクロースアップで捉えた闘牛士の主観ショットによって迫力を捏造するという選択肢もあったのではないかと思われるが、ベティカールシアン・バラードがそのような選択をしなかったのはあるいは単に技術的な困難が要因なのかもしれないとは云え、上に述べた意味において、ここでのベティカーのドキュメンタルな演出は見事な成功を収めている。

また、クインとロハスの父子関係なんてどうでもよいとは云ったけれども、二人が「君は私の息子なんだ」「知ってます」とアッサリ抱擁してしまい、職業人としても認め合うというほとんど理想的な父子関係が成立してしまうところなんていうのはなんとも感動的だ。ロハスの闘牛シーンに限って超ローアングルのショットがいっさいなく、遠目からのやや俯瞰気味のショットのみで構成されているというのは、それが息子を誇らしげに見守るクインの視線であるからだろう。

(評価:★3)

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