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[コメント] 東京の宿(1935/日)

美しさと笑いと悲劇。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







終盤、盗みを決意した坂本武の歩みを後退移動するカメラが捉えたシーンで、目の覚めるような花火のカットが挿入される(確か『出来ごころ』にも同様の花火のカットがあったはず)。 よく知られているように小津はトーキー以降の作品で「悲しい場面に明るい音楽を流す」という一種の対位法を実践していたが、そういった意味ではこの花火のカットも対位法だと云ってよいだろう。その唐突さと美しさにおいて、花火のカットは悲劇性を強調する。 また、坂本一家が原っぱで空想の酒盛りをする場面は、思わず笑ってしまうと同時に切なさで胸を引き裂かれそうにもなる。

小津映画の悲劇性は、最も美しい場面、最も笑える場面に現出する。

(評価:★4)

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