[コメント] ブロークバック・マウンテン(2005/米)
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映画史に残る名作になるだろう。 まず、台湾人であるアン・リーが本作を取り上げたのが驚愕である。今まで『いつか晴れた日に』、『ハルク』と海外でも活躍してきた実力派であるが、本作はそれらとは全く気色が違う作品に仕上がっており、アン・リー監督の集大成ともいえるべき作品である。過剰な演出は一切なく、淡々と物語りは進んでいく。決して多くを語らず、観客に全てを委ねている。
本作は「同性愛」が大きなテーマとなっている。主人公であるイニスとジャックはブロークバック・マウンテンで羊番の仕事を通じて知り合い、二人きりでブロークバック・マウンテンで過ごし、友情が芽生えて更には肉体関係をも結ぶ。その後、それぞれ結婚し、子供をもうけてからも二人は会い続け、その関係は20年続く。まずここで非常に重要なのが、1960年代のワイオミングというのは非常に保守的な土地柄であるという事。要は、ワイオミングでは同性愛関係を結んでいるという事が人に知れたら、皆から軽蔑され、下手したら街ぐるみで除外され、殺されかねないのである。そして、アメリカではキリスト教が主流であるが、キリスト教の中では「同性愛」とは罪悪であるとされている。「同性愛」とはそういった認識である。ジャックはもともと同性愛嗜好があった様で、そういった描写が何度か本作の中で描かれているが、イニスはジャックとが初めての男性体験であったようで、ジャックとの関係に苦悩する。本作の登場人物は多くを語らない。説明を出来るだけ省略し、画面から訴えてくるもので理解出来るようになっているが、それらを鑑みると、イニスはジャックの事をたまらなく好きなようだ。しかし、「同性愛」自体をイニスは軽蔑している。世間体を気にして、逃げて・隠れてジャックとの逢瀬を重ねている。年に1回会い、関係を持つだけで罪の意識にさいなまれてしまう。それに対して、ジャックもイニスのことを愛している。愛しているから、一緒に牧場を持って、一緒に暮らしたい。ジャックありのままをイニスに伝える。しかし、イニスはそんなジャックから逃げてしまう… 世間とは残酷だ。
イニスとジャックをそれぞれ演じたヒース・レジャーとジャイク・ギレンホールは大変素晴らしかった。正直、この手の感情をなかなか表さない演技は非常に苦手なのだが、感情は見事な撮影による風景が大いに語っている部分もあり、良かったです。多くを語らないからこそ、伝わるものがありました。イニスの妻を演じたミシェル・ウィリアムスも大変素晴らしかったです。そして、圧倒的な迫力のある撮影!山・空・森・動物たち…画面に映るもの全て生命力に溢れている!圧倒的な美しさを解き放っていて、見るもの全てを魅了するのではないかと思いました。
イニスとジャックが永遠に共に生きていけるような世界が出来る事を祈って…
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