コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 転がれ!たま子(2005/日)

「夢は信じれば叶う」そういうものかも知れない。しかし、コペルニクス的転換が毎日のようにあちこちで起こっているワケではない。「夢の持続」には日々の努力が大切だという、きわめてシンプルな啓蒙。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







引きこもりのたま子は、「日進月歩堂」の爺ちゃんが焼く甘食だけを愛している。その爺ちゃんが倒れ、途方に暮れたたま子は、爺ちゃんの弟子だったパン屋に甘食の焼き方を教えてもらうために、幼時から出たことのない町を出るところから出発する。そして、とりえのなかったたま子は、一通りのパンを焼くことができるまでに成長する。それは素晴らしいことだ。

母が息子ほどの年齢の坊さんと再婚し、ともにヒマラヤ登山を目指す。父がアーティストとして認められ、海外に雄飛する。弟が男として初めてのバスガイドとして就職する。それらももちろん成功だが、いささか漫画じみてリアルを生きる我々には縁遠い成功である。それに比してたま子の成功は地味であり、その直後ともに甘食を焼こうと誓った爺ちゃんは急死、店は失われてしまい腕をふるう舞台を失ってしまう不確かな「成功」であった。

だが彼女がまだまだ若いのは何よりの幸運である。彼女の夢は細腕ひとつで、新生「日進月歩堂」を立ち上げる現実的な夢につながってゆくのだ。

しかめっ面で自己を守りながら、具体的な目的のため邁進するうちにだんだんいい顔になってゆく山田麻衣子の起用もまた「成功」であるだろう。彼女は最初工員に「ブス」と呼ばれる。意識の持ち方ひとつでヒトは美人にもブスにもなることを、彼女は身をもって表現していた。地に足のついた演技であったと言えるだろう。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。