[コメント] キングダム・オブ・ヘブン(2005/米)
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1099年にキリスト教国連合による十字軍により建国され、マムルーク朝の英雄サラディンにより潰されたエルサレム王国の最末期を舞台とする作品。これまでキーワードとしては十字軍の名前はよく出てきたが、歴史上で扱った作品は極めて珍しい(『第七の封印』(1956)とか『ブラザー・サン シスター・ムーン』(1972)とかその周辺を描くことはあったが)。特に今、アメリカと中東とのギクシャクした関係の中でそれを主軸として捕らえようと企画した監督(製作も兼ねてる)の想いを先ずは評価したい。
新世紀に入ってからハリウッドは立て続けに歴史大作を連発している。ファンタジーである『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)は別扱いとしても、『トロイ』(2004)、『キング・アーサー』(2004)、『アレキサンダー』(2004)など(どれもファンタジーのような気がしてきた)、しかしそれで当たったのがあるか?と言われると、ほぼ皆無。歴史検証のために作られたというのならともかく(それだって『トロイ』はTVムービーの『トロイ ザ・ウォーズ』(2003)に遙かに負けてる)、とにかく時間が長いだけで大して面白くもないのばかりだ。
その中でスコット監督による本作は結構期待はしていた。同じスコット監督の『グラディエーター』(2000)はそんなに好きじゃないんだが、敢えてこれまで避けられてきた十字軍を題材にしたと言うことが気に入った。そして、他の歴史大作作品較べると、一本筋が通った作り方がされていたので、その点は評価すべき。細かい点で頷かせてくれるシーンが多かったのは結構うれしいところ。細かいところで突っ込むべきところが感じられないと言うだけで充分評価できる(ツッコめばいくつも出てくるんだけど、あんまり気にならない)。
それとスコット監督を特徴づける演出の巧さは本作でも際だっている。戦闘シーンでは『ブラックホーク・ダウン』(2001)で培った技術がここでも本当に巧く使われていたし、俯瞰や煽りを多用して町を縦横無尽に見せているカメラ・ワークも相変わらず高いクォリティを誇っている。演出面においては文句なし。この演出のお陰でこの長尺を最後まで飽きさせずに見せてくれていた。容赦のない殺人だって、監督なりのケレン味に溢れ、ただ残酷なだけのシーンにはなってない。
ただ、やっぱり問題は物語そのもの。スコット監督作品の大半は常にこれだ。演出でこれだけ素晴らしいのが出来ているのに、物語が退屈なものが多く、それで損をしてるような気がしてならない。
ここでは主人公がまず鍛冶屋というのがそもそもの問題あり。いや、設定は良いんだけど、何で武術訓練どころか帝王学も学んでない鍛冶屋がここまでバランスの取れた判断を持つに至ったのか、その過程が必要だったのでは?グリーン演じるシビラとのメロドラマなんて最低限にして良いから、バリアンの成長の過程を丁寧に描いて欲しかった。それとイスラムの人間との友情についても、もうちょっと時間を取って欲しかった感じ。全般的に本作はもっともっと男臭くしてしまって良かったんだ。いや、いっそこれはシリーズ化して6時間くらいの大作にした方が…無理か?
キャラは及第点。ブルームは弓矢を剣に変えただけのレゴラスじゃなくて泥臭さ満点だったし、顔を全く出してないのにノートンは存在感たっぷりだった。個人的にファンのグリーソンが憎々しげな役をやってるのも、個人的にはツボ。
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