コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] フランティック(1988/米)

ポランスキー監督作品は常に異邦人であることを意識させます。監督自身がそれを感じ続けていたのでしょうね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ヒッチコックの得意とした“巻き込まれ型”サスペンスをポランスキー監督が仕上げた作品。この手の巻き込まれ型は、実は応用があまり利かず、似たり寄ったりの内容になりがち。だからいかに雰囲気を作り出すかが物語の鍵になるが、ここはやはりポランスキー監督の上手さが映えた作品に仕上げられている。

 そもそもアメリカが主に舞台の作品を作っているとはいえ、ポーランド人のポランスキーは、アメリカ国内でも異邦人として様々な軋轢を経験している(アメリカでは妻のシャロン=テイトを殺されたりしてるし、国外退去も受けている)。異邦人としての不安を撮らせたら随一の実力を持つとも言える。お陰で彼にかかると、“花のパリ”も胡散臭い路地裏のある暗い街になってしまう。その中で不安がっている主人公というのは映える。言葉も上手く通じない場所で異邦人として行動しなければならない不安ってものが良く演出できている。

 演出で複雑化出来る分、話自体を一本調子にしたのは正解だろう…まあ、ポランスキーはあんまり複雑なものを作らない監督なんだけど。

 ただ、演出が非常に良い一方、フォードを主役に起用したのはちょっとはずれのような気もしないではない。そもそもヒーロー役が多いフォードでは、観てる側としては、あんまり不安がっているように見えないというのは致命的。もうちょっとしょぼくれた人を主役にしていれば、もっと話も映えたんだろうけどね。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。