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[コメント] 蟹工船(1953/日)

原作のリアリズムはそのままで、いや映像を生かしてそれ以上の迫力あるものになった。プロレタリア映画というより、普通の一般映画として観れるのがいい。
KEI

**ネタバレ注意**
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原作(小林多喜二、昭和4年)は、葉山嘉樹の「海に生くる人々」(大正14年)のあらすじをそのまま真似をして作られたのは有名な話(元々小林は葉山を‘父’と敬っていた)だが、両作の違いは「海に〜」は主人公がいて小説風なのに対し、「蟹〜」は特に主人公は設けず民衆を集団として描き、リアリズムに徹した点だと思う。

この映画はそれを踏襲し、更に映像を生かして迫力あるリアリズム映画になった。特に蟹の水揚げ・加工のシーンは、原作では描写の無い圧巻のシーンだ。

また原作は‘プロレタリア文学’を特徴づける幾つかの挿話―最初に「労働組合としては、蟹工船に対し・・・」という運動方針的な文章も有る。また川崎船がカムチャッカのロシア人に助けられる話、共産党のビラ、サボタージュの仕方、そして(不評な)ラストの付記(その後どうなったかという話)―等は映画では描かれていない。が描かれていないが故に、普通の映画として観れるという点で良かったと思う。

あと一言。登場人物で浅川監督[平田未喜三]は、(権力の手先ながら)一番印象に残るのではないか。「浅川ったら蟹工の浅か、浅の蟹工かっていう男よ」という原作のセリフがカットされているのも、ちょっと残念だ(笑)。

(評価:★4)

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