■老い。退屈。官能。を体現するトニー・レオン。すばらしい。

■ 40男の退屈。いちばん愛した女を喪失したあとの余生。孤独。女は全員がさめざめと泣く。この涙に、われわれ観客は付き合う価値がある。とてもいい。

■音楽家の菊地成孔が指摘していたが、アルゼンチンタンゴにはフロアを擦るようなステップがある。ハイヒールの底で、床を大きく、ギューッとこする。ふくらはぎは、はりつめる。これは「生きていくとはすり減ることだ。磨耗なのだ」というタンゴのフィロソフィーを体現しているステップなのかもしれない、というのである。

■ウォン・カーウァイもひょっとして、ブエノスアイレスで同じものを見ていたのではないか？

■ちなみに、SFではまったくない。木村拓哉も冴えない。そこは期待するな。