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[コメント] ターミナル(2004/米)

空港ライフがあまり魅力的に描けていない。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







いろんな人と出会ったり、彼ら彼女との応酬があったり、変わったものを工作したりと、案外騒々しいエピソードばかりで、ふだんは通過するだけの空間の知られざる魅力(建築的な美であったり、時々刻々の景色の移り変わり)やトリビアを描きこんでほしかった。せめて前半だけでもドラマよりなにより「空港」を描いてほしかったのに。『オールウェイズ』で恋愛を描かなきゃいけないのに、地方の飛行場を魅力的に描いてしまったあのティストを期待していたのだ。せっかく実物大のセットを作っているのに、奥行きや広がりを感じない。撮り方なのか、照明なのか、セットだから空港を背景以上に撮る気にならなかったのか。私は空港マニアではないけど、空港という空間が人並み以上には大好きで、『ランゴリアーズ』なんていう映画は、もうそれだけで大好きな作品だ。空港好きの人なら同意してくださると思うけど、なにせ空港がセットにしか見えなかったのが残念。さらにいえばセットがセットに見える映画は基本的に嫌い。スピルバーグは『フック』を撮った時、昔のハリウッド大作の「巨大セット風アクション」のテイストを狙ったというようなことを言ってたけど、スピルバーグ好きの私でもそれはまったく共感できない部分だったりする。

プライベート・ライアン』や『シンドラーのリスト』の記録映像風だったり、『A.I.』ではキューブリックの画質に近づけるために撮影現場にミストを撒いたり、『ミュンヘン』では70年調のイーストマンカラーの色調を再現したり、『戦火の馬』では俳優のアップカットでわざと人工的なライティングにしてみたりと、カメラおたくのヤヌス・カミンスキースティーヴン・スピルバーグは、作品ごとに実に様々な撮影アイデアを出して、その作品にもっとも適した空気感を見せてくれるのが毎回興味深い。してみると監督はこの作品の空港をどう見せようとしたのか? 何が撮りたくてこの作品を撮ったのかよくわからない。

人間ドラマはさっぱりだけど、カメラ小僧が撮りたいものを撮るという情熱が感じられるのが私のスピルバーグ作品に感じる魅力なのに、それがなかったということで勝手に残念がっているのが今回の私の所感だが、これ以降の作品を見ると、監督は案外人間のドラマを描くことに本気で傾注していくようにも思える(『リンカーン』とか『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』とか)。スピルバーグのリスペクトする映画監督ってフランク・キャプラらしいから、そういうものになっていこうする途中の作品てことなのかも。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)死ぬまでシネマ[*]

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