チャールズ・チャップリンの言語がパントマイムだとしたら、ジャッキー・チェンの言語はカンフーである。というように洋の東西を二分して司るアクションカルチャーを決定づけた一作である。特に本作は、アクションのアイデアでシーンを構成するというディレクターズ・チョイスがマジックのごとく成功した奇跡的な仕上がりである。盟友サモ・ハン・キンポーやユン・ピョウを脇に従えることで豊穣な映画的空間を生んできたジャッキーであったが、本作はそうした顔ぶれに依ること以上に意味があるアクション至芸の先鋭化であった。それこそ８０年代にTVで見ていたころは気付くよしもなかったが、今見るとまだ返還前の香港という絶妙なロケーションが、このカオティックでアナーキーなエネルギーを生むことに大きく寄与している。かように様々な要素のグッドなタイミングがこうした傑作を生むということ、またレトロスペクティブ的に味わえることができるという、映画ならではの魅力は筆舌に尽くしがたい。