[コメント] 馬喰一代(1951/日)
本作も屋内シーンは、ほゞローアングルだ。屋外では、それほどのこだわりはないように見える。勿論、乗馬シーンや馬車の疾駆シーンなどのアクション場面が多いことも関係している。
三船敏郎と志村喬、それぞれの一派が賭場で大喧嘩した後、馬車と乗馬で三船の家へ疾走する場面では、三船が馬車から馬に飛び移るという『駅馬車』オマージュの演出まである。家では、三船の女房、市川春代が待っている。市川は出番が少ないが、三船の心には彼女が居続けている、ということを印象付けるに足る存在感だ。京マチ子が三船のことをどんなに一途に思い続けても、彼には通じないのだ。京と三船の関係のじれったさが中盤以降の一つの見どころとなる。
とは云え、本作は完全に三船が背負って立つ、三船の魅力全開のスター映画なのだ。祭りの日に、右腕を痛めた状態で、三人抜きの商品である三輪車欲しさに相撲をとる場面が、全編でも最もよいシーンだろう。隣人の菅井一郎が行司というのもいい。
また、子供の学資を稼ぐには、良い馬を育てて競馬で賞金を稼ぐしかない、それ以外の方法が考えられない、というのが馬喰らしさだ。馬が病気になり横臥した状態のままになってからの場面で、雨降りの夜、三船が馬房の雨漏りを修繕するシーンも、鬼気迫る演出だ。こゝで凄い斜め構図がある。この演出に呼応するように、馬が出走したレースの実況を、ラジオで聞いた後の三船のカットも、斜め構図になる。やっぱり、木村恵吾のカメラの使い方は凝っている。ただし、やっぱり本作は三船のスター映画として際立っており、木村恵吾の監督作としては、物足りなさも残る。
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