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[コメント] 戦場よさらば(1932/米)

確かに、ヘレン・ヘイズがミスキャストだし(というか、ハリウッド映画のヒロインらしいルックスではないし)、アドルフ・マンジューの振る舞いは(というかキャラ造型は)、能天気に過ぎるが、画面は見どころ満載の映画だ。
ゑぎ

 爆弾の爆発でクレジット。倒れている兵士の画面奥の道を、救急車の列が通る。面白いカットだが、これは、一見してミニチュア(模型の車)だと分かる。救急車には、ゲーリー・クーパーと男性看護師たち。クーパーは救急車のドライバーだ。対して、ヒロインのヘイズは、病院の中で、梯子の上に乗ったカットで登場する。仰角俯瞰の演出。クーパーとヘイズの出会いの場面は、空襲の最中で、ローキーの画面だが、パーティ会場で再会した後の、噴水の前のシーンでは、嘆息するほど美しい光なのだ。

 クーパーが戦場で負傷し、ミラノの病院へ運び込まれる場面では、担架に乗せられたクーパーの、強烈な見た目のカットがある。天井や婦長がフレームインするが、最後はヘイズが凄いアップ、ピンボケするぐらいのアップで画面に入り、キスをする。この後の鐘が鳴る尖塔のカット。これもミニチュアだろう。

 また、流麗なカメラワーク、ということだと、ミラノの町中での人形劇から、カットを割らずに回り込んで、カフェのクーパーたちの席を見せるカットだとか、通りからクレーンで2階の窓へ移動し、窓の向こうに見える絵画で繋いで、屋内へカメラが入り、そのまま移動して、ベッドのクーパーとヘイズを鏡に映すカット。あるいは、終盤の、手紙を書き、読み返すヘイズの様子を見せるカット繋ぎなども特筆すべきだ。

 そして、クーパーが、戦場から半ば脱走し、ヘイズの元へ帰る場面。戦場の様子をディゾルブで繋ぐのだが、個々のカットは、ほゞスタジオセットでの撮影だと思うが(こゝもミニチュアが使われているだろう)、繋がれたシーケンスは、なかなか迫力のあるモンタージュになっているのだ。テクニカルな面では、とても充実した映画だと云えるだろう。

(評価:★4)

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