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[コメント] 脱獄広島殺人囚(1974/日)

筋目も仁義も侠気もなく、ただひたすらに自由への渇望、生への渇望を描いている。どうしても優しさの抜けきれない松方弘樹のために用意されたようなストーリーと演出。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 実際この人ただの人殺しの売人だからね。本職極道の伊吹吾郎が来たときに「本物の極道じゃあ」とか言ってビビってたくらいだから、どちらかというと質の悪いチンピラの類だったのかも知れない。

 そういう視点で考えると、強面な表の顔に弱気な裏の声を被せるなど、どことなく軽薄な感じの演出も納得できます。多分この作品は「ヤクザ映画」と「青春映画」の雑種的存在なんです。そして「若者の青春映画」であるからこそ、「自由と生への渇望」というテーマが意味を持ってくるわけなんでしょう。

 ただし、「雑種」とは言ったもののその「混じり方」が中途半端。「ヤクザ」と「青春」が混在しているだけで、上手く混じり合ってないんですよね。だから観ている側も、憧れてよいのか共感してよいのかが今ひとつ判らない。それまでスゴイ極道顔だったのに、急に心の声で「ええい!勝ったら勝ちじゃあ!」とか言われてもリアクションに困るんです。

 しかも何とかクライマックスで乗ってきたと思ったら唐突に終幕。まぁ「執念」を描くエンディングとしてはアリなのかも知れませんけど、流れとしてはちょっと煮え切らない気がします。

 ただ昭和22年入所で刑期40年だと、このモデルの人、この映画の公開時にはまだ刑務所の中にいるはずなんです。しかも「7回脱獄してる」ってことは、この映画のエンディングの後も捕まって、脱獄を繰り返している。それを考えると唐突なエンディングはやむを得ないのかな。物語自体が終わってないわけですもんね。モデルの人は刑期を勤め上げたのかな。それともどこかへ逃げ切ったんでしょうかね。

(評価:★3)

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