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[コメント] 希望の降る街(1942/米)

これは、ジョージ・スティーヴンスの最良作ではなかろうか。もう冒頭数分のサイレント的処理から好印象だ。
ゑぎ

 ケイリー・グラントが逮捕され脱獄する迄を、新聞等のオーヴァーラップを交えて処理し、続いて雨、足の怪我、泥濘、雷、グラントの険しい表情といった素早いモンタージュ。民家(一軒家)の窓へカメラが寄ると、女性の脚が映る。脚の主はジーン・アーサー。グラントが民家のドアを開ける。といった導入部約5分のこぎみ良さがいい。

 しかし終盤まで、この民家が主役と云って良いくらい殆どの場面の舞台となり、大勢の人物を出入りさせる。しかも、その見せ方がなかなか捻った見せ方なのだ。まずは、装置として、窓や階段を活用する術が見事だ。また、新たな登場人物は、多くは、とても込み入った状況の際に出現する。例えば、ロナルド・コールマンの登場が顕著だし、その従者であるレックス・イングラムが中盤になって遅れて登場する際もそうだ。あるいは、コールマンが警察を呼ぼうとして電話するのを、グラントが殴って止めたにも関わらず、別の要因で警察が来てしまう、といったアイロニカルな展開も面白いし、他にもスクーターの爆音等、オフ(画面外)の音処理での変化の付け方も凝っている。さらに、アーサーとコールマンの2人は明らかにコメディの演技演出で振る舞い、グラントだけは、状況的にシリアスな演技で通している部分が多いのだが、コメディとサスペンスを上手く融合させる 演出も見事なものだと思う。そして、ラストで舞台が最高裁判所に移るが、最後の最後、最高裁ロビーのカット、フルショットでの後退移動撮影の演出も、非常に満足感が高い。

#脚本には、「夏服を着た女たち」のアーウィン・ショーが参加している。

(評価:★4)

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