[コメント] 男の敵(1935/米)
深い霧の闇に閉ざされた一夜の出来事として、地下組織という陰(かげ)の活動家たちの、さらに優しさが弱さとなって露呈する構成員の心の暗部という陰が描かれる。表社会に対しての裏、責務に対しての裏切りという二重構造の「陰の話」が密告者を追い込んでいく。
思想より人情。知性より腕力。そんな反エリート構成員が断罪されていくのだが、悪事に悩みはするが悪びれず、窮地にも飄々と愚鈍な、優しき裏切者ヴィクター・マクラグレンの行動と風体に、私たちは自身の弱さを重ね合わせて終始同情心のようなもの抱き続ける。結果、物語は悲痛でありながらも悲惨は回避される。
赦されたのは私たちなのだ。
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