[コメント] 死に花(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『金髪の草原』も『ジョゼと虎と魚たち』も両方とも好きだし『大阪物語』(脚本担当)も割りと好き、て感じにこの監督とはそれなりに相性が良い。この三作を見た限り、この監督はちょっと切ない(時に残酷な)物語をさらりと綺麗に(美しく、ではなく綺麗に)作る監督、と言う印象。
で、本作。高級老人ホームで悠々自適な生活を送る老人ドモが「最後に一(死に)花裂かせましょうか」と言う感じで”面白そうなこと”をしながらイキイキとしだす物語・・・って感じで、その”面白そうな事”てのは銀行強盗。しかも、その内容は穴を掘って地下から・・・ってそんな適当な話を犬童監督が!?と、言う感じに不安むんむん。見てみてビックリ。不安的中。ナンジャコリャ。
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そもそも、このプロットで二時間持たせようとしているのが間違い。冗長すぎる。こんな歯切れの良い、イキイキとしたちょびっとアドヴェンチャー風味な物語を犬童監督がやる、ってのは新境地開拓になるのかもしらんけど(この人の他の作品を見て居ないので何とも言えない)、ちょっと作風とプロットがあってない気が・・・
大体、脚本が稚拙。役者が割りと良い雰囲気を出しているので、見れた作品にはなっているけど、老人をメインに据えておいて何かしらの社会問題を取り込む訳でもなく、「年齢」と言う壁を用いたブラックなギャグをするでもなく、もくもくと二時間進んでいく展開にはさすがに嫌気が差す。冗長すぎる。
キャラクターがステレオタイプで、女好きのエロジジイとか元銀行マンに運動バカ(?)の映画プロデューサーに・・・あと一人、誰だっけ?(答え:谷啓)て感じに、キャラが薄っぺらい。その上、物語も薄っぺらくて、捻りも糞もない。
オープニングが新人看護士(看護士、って言うのか?)のナレーションから始まるので、物語は彼女を中心に展開するのかと思わせておいて、話はあちこちへ飛び回る。最終的に、物語をあの99歳の爺さんの防空壕での思い出に帰結させたのは上手いと思ったけど、それ以上の物は無い。
老人同士の恋愛をあんなにねちねちと描き、バイアグラまで登場させてしまうのなら、いっそブラックユーモアをメインに据えて黒い笑いを追及しながらトホホな銀行強盗、と言う感じにすればいいじゃないか。一体何を狙っているのか分らない脚本。
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演出も中途半端だし、何よりもクライマックスのビルの傾き。アイデアとしては面白いとは思うけど、脚本が中途半端なら演出も中途半端で映像は安っぽいんだかきちんとしてるんだか良く分からないし、イキナリ物語が土台から宇宙の辺りまでぶっ飛んだ感じに、シュールな日常(?)から一気に確実に有り得ない非日常な世界に飛ばされた感じで、ちょっと付いていけなかった感じがする。
そもそも、この物語って歯切れ良く、小気味良くトントーンと、言う感じで軽いテンポで笑いを取りながら進行させるべき物語のはずなのに、ステレオタイプの登場人物を適当に絡ませながら中途半端に老人同士の恋愛を描いて中途半端な笑いをとって二時間時間稼ぎしているだけ。
正直、がっかり。
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犬童監督、ここで小遣い稼ぎした分だけ次で良い映画撮ってね。
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