[コメント] 別れて生きるときも(1961/日)
駆け足ダイジェストな部分が何とも残念だが、田宮虎彦がハードな体験を女の半生記として捉え直したとてもいい作品。評価されるべき司葉子の代表作と思う。地下鉄までスタジオに再現した美術はもの凄く、続く突然巻き込まれる226が箆棒にリアル。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
居並ぶ共演陣もとてもいい。悪役の芥川比呂志、松村達雄と善人の賀原夏子という以外さが嬉しい。児玉清と高島忠夫というTVアナウンサーが若い頃の持ち味を発揮しつつ共演しているのも愉しい。高島は茫洋とした魅力が小林桂樹と重なるものがある。小池朝雄の青年将校、市原悦子のバカ、端役の西村晃や田中邦衛もいい。美術は大八車から水巻く「東京都散水車」がとても印象的。ワンシーン、背景に汽車が高架を走る処は、あれは合成にも見えず、いったいどうして撮ったのだろう。
村松の、ときどき縁側に現れて茶呑んで帰る特高など、田宮にしか描けない生々しさがある。出版業から北海道の炭鉱へ連れて行かれる小林もそうだ(あんな年寄りにも炭鉱作業をさせたのだと驚かされる)。小林にも田中絹代の母親にも音信不通で終わるのが切ない。ただ、旧民法の下、亭主の芥川があれしきで引き下がる訳はなかろうという気がする。
ベストショットは卒業証書片手にスカートの裾見事に翻して一回転する司葉子。卒業ってあんなに嬉しいんだという小ささが心に沁みた。ファーストシーンの格子戸から脱出するショットからして素晴らしく、やつれ行く終盤が寂しい。沖縄戦に突撃する小林の戦艦を見送る彼女の鬼の眼に、全ては込められたという感慨が重い。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。