[コメント] ステラ・ダラス(1937/米)
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なんというコケティッシュな口元だろう。老け役まで演じる本作では、この口元が時に皮肉に歪み、ラストでは娘を幸せにできた満足の小さな笑みに収まった。このラストの引きのキャメラがとてもいい。警官に動けと云われて「誓いのキスだけ見せて」と柵にしがみつく彼女、警官は仕方のないオバはんだと思ったことだろう。本作が好きだった淀長さんはお話し会で、彼女が両親を早くに亡くして姉に育てられた境遇だったと語っていた由。
母の「下品さ」が知られて誰も来てくれなかった娘の誕生パーティ、という展開は、本作の翻案と云われる英百合子の『母の曲』にもあった。避暑地では本作はもっと母さんも愉しませてよと「バースディー・ケーキのような洋服」を身に纏うのだが、英百合子はいづらくて帰りたがるという逆転した引用がなされていた。
産後3週間でダンスの相手するエド・マン(アラン・ヘイル)は、最後は娘に嫌われるために利用される。彼が酒の代わりによく呑まされているサルサバリラは今でいうドクター・ペッパー。彼は三島雅夫を思わせる。
マサチューセッツ州1919年から始まる労働者階級出身者の話。スタンウィックは服装や化粧は亭主とやり合う派手な趣味だけど、娘にだけはまともな服を作るんですね。そして自分が娘の恋人から批難されているのを知って身を引くのだった。上流階級志向とは何だろうという問いかけが残る作品だった。
英題が登場人物の名前であることは多いが、邦題もこれを踏襲するのは珍しいだろう。汽車の一等車両の描写が貴重。ほとんどサロン風の椅子が三等車なら2席の処に1席ずつ固定されていた。
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