[コメント] ガラスのうさぎ(1979/日)
主人公・敏子の変わらぬ健やかさが可憐だが、どんな状況下にあっても小奇麗で、やつれるような思いもしない彼女に、まだ彼女は恵まれているほうだ、と考えてしまうのは自分がスレているからだろうか。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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こういう映画こそ、間違いのない戦争の恐怖を描いて然るべきだと思うのだ。
父が白昼、戦闘機の機銃にさらされるシーンでは、戦闘機は火花を散らす模型飛行機に過ぎず、背景の山里はあからさまなカキワリだ。そして敏子と兄たちが出会う焼け跡の我が家は奥行きのないセットだし、バラックを構成しているのは何処で調達したか知れない真新しい合板だ。
これを書く時点でまだ見てはいないが、この作品は今年(2005年)アニメ化され、それの鑑賞をするつもりでいる。自分はアニメの「火垂るの墓」をその理想化された画面ゆえに批判し、実写にせねば意味はないと説いたが、今回の作品を見るかぎりアニメと実写のどちらが「綺麗事」で済ませているかは疑問だ。描かれる世界にも楽しみはあり、喜びはあるだろう。しかし、この映画世界に子供が憧れをもってはいけない、というのが第一条件ではないだろうか。その意味でこの映画では、帰ってきた兄が兄弟同士の約束を捨て、ダメ人間になってゆく場面こそが、唯一のリアルな場面だったような気がする。戦争のなかで希望を捨てて帰還する話は大人の世界では山ほどあるが、こうした「ささやかな悲劇」が児童映画のなかで語られたことは例を見なかっただろう。
資金がなくストレートな悲劇が描けなくとも、こうした切り口があると示したのは立派だとは言えるだろうが、アイドル映画的呪縛から脱却せねば、ほんとうに戦争を語ったことにはならないだろう。
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