[コメント] ヴァイブレータ(2003/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
男にとっても、ひととき寂しさを紛らすだけのゲームみたいなものだったんじゃないのかな、と思う。
ちょっとカマかけてみたらホイホイ乗っかってきた女。「道連れにして」なんて言われりゃ別に断る理由もないけど、ちょっとまだまだ正体不明だから「嫁がいる」、「ストーカーがいる」なんて嘘ついて、あんまり踏み込まれないように防衛線を引いて。
この手の女って初めて出会うと確かに魅力的に見えたりするんだ。丸出しの脆さは男の庇護欲を否応なく刺激するし、いつでもヤラしてくれるし、何よりスリリングだし。
だけど、それだけ。「好きだ」なんて言ってみても、せいぜい何百メートルか走る間ハンドル預けるのが精一杯で、女の人生全部丸ごと受け止める覚悟なんかありはしない。かと言って、旅の途中で電車賃だけ持たせて捨てるようなこともしない。そんなことしたら自分の心にわだかまりが残るから。だから結局最後には拾ったコンビニに送り返して、全部リセット。何もなかったことにしてしまう。
そりゃそうなんだよ。「自分のひとことで周りの人間があたふたするのが……うれしい」なんて考えてる女とは、普通の神経じゃ付き合いきれないんだ。
この女は、また数時間か数日かしたらアルコールに溺れるし、食べたり吐いたりを繰り返すことになる。そういう、彼女が普段から繰り返してる刹那的な解放感が、たまたまこの男と出会って何回かセックスしたから3日間持続した、という、それだけの映画にしか、私には見えなかった。
彼女が苦しみながら吐き出した「お母さん……」という呟きに、この映画は回答を示さなかった。そこから見える彼女の未来は、何ら回復の兆しさえ与えられぬまま35歳になり、40歳になるという現実だけだ。そしてゲロまみれのオバサンになって、セックスしてくれる男なんて誰ひとりいなくなるんだ。男にとってはそんなこと関係ないけれど、それじゃあまりにも、彼女がいたたまれないよ。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。