と、ちょっと思う。『ガン＆トークス』と言うタイトルの「talks」はどう考えてもお喋り（実際仮題だった時は『キラーたちのお喋り』だったそうな）な訳で、そいつが複数形になってる、つまり殺し屋４人がお喋りって訳なんだが、どうして「銃」は複数形じゃないんか、、、謎だ。

と、まぁそんな事はどうでもいいのだが、このタイトルと、劇中、血だらけのリーダーを車の後部座席で運んでいるシーンから、監督はタランティーノのパロディを多少なり意識しているのかと思う。っても、話自体はジョン・ウーテイストな物をコミカルにポップ（？）に仕上げた、と言った物だろう。

個人的に、殺し屋が主役、となると何かしら「命」に関する哲学をやってくれる事を希望してしまう。人を殺す事を職業とする者だからこそ解る命の重み、みたいなのを。４人の主観意見のぶつかり合いで、その「命」の哲学を描き出してくれる事を多少なり期待はしたが、いやいや、全く違った。多少なりその様な物はあるかもしれないが、基本的にこれはコメディなんだ、と言う事を確信させられてしまった。

しかし、「初めて恋を知った」ってのはいくらなんでも有り得ない様な気もしないでもないが・・・。

さて、オープニングの殺人シーン。なかなか見事だった。４人のうち、三人（最年少は何をしたいんだ？警備員室で電気を点滅させただけじゃないか）がきっちり仕事をこなして殺す。あの冒頭で一気に引き込まれた。ただ、問題なのが流行の弾丸描写。あれはいい加減工夫して欲しい。ガラス越しの狙撃、と言う物は良いのだが、それを流行の弾道を見せで表現してしまってはチープさが漂ってしまい、正直うんざりした。お陰であのスナイパーがあまりクールに見えなくなってしまう。やるなら、ターゲットが電話とかしていて突然ガラスの割れる音がしたその後に間髪居れずに電話を貫通して弾丸がコメカミに・・・と言う方が良い気もしなくも無いが・・・。あと、画面分割。なんと三分割までやっちゃう訳だが、あの３分割シーンの意図が全く見えない事。それの少し前の二分割（爆破プロの矛盾に溢れた話のシーン）はかなり笑えて、上手い使い方だっただけに、調子のりすぎ！と、突っ込みたくなった。

その後は面白いコメディを見せてもらえた。コメディの中にシリアスを上手く混ぜ、恋愛、友情を上手く絡ませる。オペラハウスまで一気に見せてくれるその手腕はたいしたものだった。そして一気に話がオペラハウスに集約した時、興奮は最高潮に。緊迫感こそあまり無いが、普段ふざけてる野郎どもがきっちり仕事をこなす姿に、オペラに彩られながらの爆破、狙撃。なんと美しい事か。予告でも痺れたがあの車爆破シーンはメチャクチャぶっ飛んでる。

しかし、これが終わった後の展開の冗長な事。大体この手の話で上映時間が２時間を越えている地点で嫌な予感がしたが、この話はオペラハウスまでで結構。確かにやってる内容自体は面白いのだが、明らかにオペラハウスをクライマックス級の演出で見せておきながら、まだだらだらと数十分映画が続いてしまうと観客は取り残されてしまう。少なくとも俺は取り残された。何よりもこの後半、結局リーダーと警官を描く事に終始しているのだ。それまでの登場人物、女子高生や妊婦等の存在が全て消えてしまったままエンドロールを迎えてしまう。この手の話で、中盤に登場して主人公が恋をしてしまう相手を終盤で消してしまうとは、何たる事か。突然演出が下手クソになっている。それから特捜（だっけ？あの警官）の内面描写。イマイチわからんね。確かに気が付けば殺し屋と心が通っていた、と言うのは解るし、最後に開放したのもなんとなくわかるんだが、なんかはっきりしないんだよね、あの人。うーん、もう少し解りやすく描いてくれれば・・・俺の頭が悪いだけか・・・。

まぁシリアスになりすぎず、しかしやるべき所はきっちりシリアスに、笑わせる所はきっちり笑わせてロマンスもきっちり描く。問題なのが無駄に長い事でもう少し刈り込んで１時間４０分か５０分程度の作品に仕上げればもっとテンポ良くコメディ、ロマンス、アクションが混ざった上手い作品になっただろう。それからスナイパーをなんで全く描かないのか。見終わった後、確かに満足感が残るが冷静に考えると、オペラハウス以降の無駄さと、スナイパーを描いてない事に気付く。他の奴らは恋愛したり、仕事のプロ意識で悩んだり、自己主張に関して葛藤したりするのだが、スナイパーに関しては何も描かれない。内面も外面も、ただそこにいてギャグの材料となるだけ。なんでここまでやっておいて、メンバー一人放置するかねぇ・・・。

★３（オペラハウス以降の展開、人物の描写等々、後半に悪い所が集約しすぎている。無駄に長いし。★３．５）

まぁ映像的にも、話的にも飛びぬけた上手さ、ってのは無いけど、（飛びぬけてオペラハウス以降はクソだったけど）まぁエンターテイメントとして十分楽しめたし、よしとしよう。