[コメント] 上海バンスキング(1988/日)
戦前の上海の爛熟した愉しさが伝わってくるような画面から、戦中・戦後の虚無への傾斜へ。このヴァージョンは舞台を舞台として活かすことで、長廻しを退屈に見せない映画化に成功している。何といっても吉田日出子のアンニュイさを含んだ歌姫ぶりが光る。
戦前の上海の愉しさは窓外のカキワリよりも、狭いセットの中から香ってくる。その灯りは戦争とともに消され、敗戦後のヒロインの屋敷には虚無だけが残った。内地の人間よりは遥かに幸福だったのだろうが、祭りのあとを思わせる殺風景なセットの哀しさは胸にこたえる。
「海ゆかば」を軍人たちの前でファンキーに演奏してしまう痛快さもあったが、所詮は蟷螂の斧に過ぎなかったか。
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