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[コメント] 瀬戸内少年野球団(1984/日)

全般的に明るく作られたしっかりした反戦映画。こういう作り方もあることを思わされます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 戦争の非道を描くのはいくつかの方向性がある。戦争そのものを描き、そこで起こっていることを克明に描くこと、その背後にある国民の窮状を描くことで、この場合はどちらも戦争そのものの悲惨さを描くことに主眼が置かれる。

 そしてもう一つは、戦争後の明るい時代を描きつつ、戦争の爪痕を描くと言う方法で、本作は後者に当たる。

 本作は基本は戦後の子供たちが、アメリカに占領されることによって民主主義と自由というものを受け入れるまでを明るく描いてるのだが、劇中いくつもの負のキーワードが挿入される。それは戦犯であったり、進駐軍であったり、傷痍軍人であったり、戦死後家であったり。これらの影の部分を挿入することで、実は本作は戦争を総括しようとしていることを思わせられる。結果として本作はしっかり反戦映画のフォーマットを踏襲してる訳だ。その重さがこの作品を特徴づけているのは確かだろう。

 もちろんそんなことを考えなくても、物語としても充分楽しめる作品になってる。メインはバラケツの初恋の行方だが、夏目雅子と郷ひろみの美男美女夫婦の哀しい関係も丁寧に描かれてる。特に夏目雅子は陰のある演技がとても映えてるので、そこも見どころ。カメラマン宮川一夫の円熟したカメラワークも美麗。

 痛みを伴う恋愛というのは、この時代を舞台に取ると普通に作れるものだ。今は痛みを演出するのに苦労する時代なんだな。

 …とはいえ、結構文句も多い作品だったりもするんだが、その中で最大はキャスティングがメインを除けば軽すぎるところ。全般の練り込みが足りないために淡路島という特定地域に見えないとか、描写不足がやや目立つこと。メインでもやはり郷ひろみがなあ…なんでわざわざあんなに格好良く撮ろうとする?これにかんしてはもっと汚く描いて然り。この中では浮きすぎてたよ。

(評価:★3)

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