[コメント] 死者との結婚(1960/日)
手に入れた自分の居場所につきまとう罪悪感という主題はトリッキーな設定を超えた普遍性が感じられ、原罪の感覚とはこんなものかと思わされる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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優秀な原作なのだろう。非情な設定が情に溢れる結末になだれ込む。思えば英米推理小説の定番ではあるが、定番自体が優れている。この呼吸を映画はとても巧みに物している。バンバン流れるドライな編集に東山千栄子の度外れな愛情が重ねられるのは、通念では水と油と思われるが、これが実に巧みに重ね合わされる。
小山明子の「苦労」は意外な形で報われ、映画は彼女を慰める。人と人の間の形には色んなものがあるものだと思わされる。今際の床で東山は「優しくするのは気持ちの良いものですね」と告白する。冷静に解すれば、このとき彼女は愛情溢れる自分を客観視していたのかも知れない。
ただ、収束は微妙な処で好みではない。東山の凶行は台詞で匂わるだけに留めるほうが、いかにも推理劇風なあけすけさがなくていいと感じる。渡辺文雄の心情はもうひとつ理解できない。小山が家を去るラストは家に留まる方が残虐が増しただろう。しかし、もうこれ以上彼女を虐めないでもいいのかも知れない。
オーシマ抜きの大島組作品で、議論しない普通の小山は暗い性格の山本富士子に見える。高野真二の強請り男ははまり役。音楽はタイトルバックのドラムソロが格好いいが、劇中は音量が小さいせいかラジオから流れているジャズぐらいにしか聴こえない。ベストショットは客船沈没を示す突然の洪水のワンショット。
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