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[コメント] マーサの幸せレシピ(2001/伊=スイス=独=オーストリア)

この映画の最大の面白さは、本作がドイツ映画である事だろう。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 既に何度も書いているが、視聴者のツボを押す映画というのがある。そのツボってのは多数の映画を観ているうちに傾向として分かってくるものだが、私にとってはそれは“家族を作っていく”というものになってるのが特徴。この場合家族というのは、血のつながりに留まらない。いやむしろ初めて出会った人々が、ぎくしゃくしながらも人間関係を作っていき、やがて本物の家族となっていくというもので、この手の作品はほぼ無条件で高得点を上げてしまう傾向がある。

 本作もまさしくそのフォーマットで作られたべたべたな作品ではあるのだが、そのベタな演出がとてつもなく心地良い。何より本作がドイツ映画というのが最大のポイントだろう。何故なら、ドイツ映画の常として、“言葉で伝える”という事がとても重視されているから。雰囲気によって伝えるとか、言葉にしないで相手が推測するとかも映画の面白さには違いないが、ドイツ映画の場合は、そんな雰囲気よりも、しっかり自分の主張を口に出すのが特徴。そのために人間関係がぎくしゃくしたりすることも多いのだが、それが他の映画にはないアクセントになってる。

 マーサはまさしくそういったドイツ人気質を体現しており、自分の主張ははっきりと口にし、全てを合理的に捉える。仕事に生きると決めた以上は、仕事以外のことに興味を持たず、ひたすら料理のことのみを考えるという女性だったのだが、そんな彼女が無理矢理押しつけられてしまった姪の面倒を看なければならなくなった時、それまでの合理的なものが全て吹っ飛んでしまう。それでもなんとか理性をつなぎ止めようとした結果、精神的に参ってしまう過程が上手く演出されている。結局合理的精神で家族関係を構築するのは無理と分かってきた時に、イタリア人のマルコの存在が光ってくる。同じヨーロッパでありながら、全くドイツ人とは気質が違うイタリア人の典型のような男が良い具合にハイチされることで、家族構築にしっかり結びついていくことになる。

 結果として本作は、ドイツとイタリア、そしてフランスというお国柄を上手く演出することで面白いバランスを取っている訳だ。

(評価:★4)

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