コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 番場の忠太郎 瞼の母(1931/日)

大衆演劇の良いとこ取りな定番、「忠太郎はんはどなたが演りはんの」の世界で、若き千恵蔵の色気は今観ても鮮烈。流布している弁士付きのバージョンは立派なもので、弁士っていいなと思わされる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画のラストは原作をひっくり返してあり、なんと忠太郎の瞼に母は浮かばなくなり、振り返ると母と妹が立っていて、このふたりのショットが亡霊のようで驚かされるのだが、三人は抱き合い和解の涙にくれるという結末。意欲的な改編だったのかも知れないが、いやもう、どっちでもいい、ともかく拍手、の世界。

しかし、鬼畜のような親を持った人はこの手の定番作品をどう観るのだろう。疎ましいだろう、多分。本作が当時、封建社会のイデオロギー装置として機能したろうことは容易に想像できるし、昨今の大衆小説もこのパターンを飽かずに繰り返している。忠太郎も不幸だが、忠太郎に共感できない者もまた不幸だ。この作品に拍手を送るのはその片方に否応なく加担する態度表明である。そんな想いが喉に刺さった小骨のように本作を満喫させてくれない。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。