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[コメント] チャップリンの夜通し転宅(1915/米)

芸の細かさは散見できるが構成が出鱈目すぎて退屈なBADムービー
junojuna

 言わずもがなエドナ・パーヴィアンスのチャップリン映画初出演作である。ホテルでの隣部屋同士のモンタージュにおいて強引にすぎるエドナのアップカットが挿入される異物感はチャップリンがそれだけ入れ込んでいたことの証であるのか、犬と並んでカメラ目線で映るエドナの表情は、以降のチャップリンフィルモグラフィに伺える彼女のイメージの原点と思えば感動的なカットといえる。ここでもベン・ターピンとの格闘は熾烈さを増しているが、唐突ではありながら、公園のベンチに座っているチャーリーを見つけて駆け寄ってくるターピンが「ルームレントの割り前寄こせ!」と詰め寄るシーンで、チャーリーにレンガで殴り倒されるという一幕は、前作にもましてチャップリンの嗜虐性が突出していて目を瞠る。しかし、その非道ぶりもターピンとの相性の良さか一際の笑いを醸し出すのに成功している点では、この時期の勢いが見てとれてセンス・オブ・ワンダーである。前作ではローランド・トザローとの共作であったが、本作ではハリー・エンサインを得て室内空間のデザインスケープに秀でた画面をものにしている。この時期は一見してエンサインとの仕事の方がチャップリンの舞台空間の切り取り方に相性の良さが見て取れる。エッサネイ期においては、トザロー5本にエンサイン11本(次作『チャップリンの拳闘』はトザロー、エンサインの共作)とエンサインを多く起用したが、ミューチュアルに移籍してから以降はほぼトザローとのコンビが定番となった。どういう契機かは分らぬが、どうやらこのエッサネイ期においてチャップリンの映画技術に対するコンセプトが明確になったことを伺えて興味深い。映画の質について語彙が豊かになりつつある初期チャップリン。

(評価:★2)

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