チャップリン監督作でありながら、ドラマとしての枠組みも見当たらない敗戦処理的な消化試合ムービーといった趣が残念な作品である。チャップリンによるチャーリーの生命線であるアクションによるコミックワーク、もしくは諧謔に富んだアイデアによるパフォーマンスの決定打を欠いてしまうと途端にチャーリーは精彩を欠いて小兵ぶりを露呈する。まあマック・セネット政権下でコンスタントにヒット作を量産することは並大抵のものではないと推して測るべしではあるが、どこか感心できる芸のひとつでも期待して見たいというのが外野の心理であろうか。しかし、この1914年のチャップリンが旺盛に活動を邁進し、映画経験値を豊かに蓄積することがなければ、後に生み出されることとなる名作の数々も存在しなかったであろうことを案じれば、チャーリー黎明期の動く資料を見ることができるだけでも貴重である。