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[コメント] 12人の優しい日本人(1991/日)

これを観てると日本に陪審員制度が無いことが理解出来ます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 アメリカでは裁判の映画が立派な一ジャンルとして確定しており、その中からもいくつもの傑作が出ているが、日本では映画にはなりにくい。ぱっと思い浮かぶものを挙げていくと野村芳太郎監督の『事件』(1978)や周防正行監督の『それでもボクはやってない』(2007)位だろうか?それぞれに評価は受けているものの、極めて数が少なく、やはり一ジャンルとまではいってないのが現状。

 その最たる理由として陪審員制度があるだろう。アメリカの陪審員制度は、そこに向かって弁護士が主張することでドラマが生まれやすい。日本ではそれが無い上に、裁判にはとかく時間がかかるために、よほど真面目な内容で作らないと難しいというのが現状。  本作の場合も、この物語は本当の意味でのリアルなものではなく、もし日本に陪審員制度があったら?という仮定からなるフィクションである。題目を見れば分かるとおり元ネタは『十二人の怒れる男』(1957)からで、そのパロディ的な作品になっている(舞台劇では既に筒井康隆が書いた戯曲「12人の浮かれる男」というのがあって、これは舞台劇で観ている)。ただ、パロディと一口に言っても、それに収まってはいないのが本作の特徴でもあろう。これを観ていると、何故日本に陪審員制度がないのか。と言うことが、日本人的な心情から汲み取れてしまう。

 表題にあるように、日本人的な気質として、優しすぎるところがどうしても出てくる。議論好きよりも、結論が出たらそれで良い。と考えてしまうし、後ろめたい気持ちを持ちたくない、という思いから、つい無罪にしたくなってしまう。この連中の反応を見てると、自分が言いそうな事も出てくるし、こういう反応するだろうなあ。という事に満ちあふれてる。少なくとも私は陪審員には向いてないと言う事がよく分かったのは、一つの成果でもあろう。私も又、「優しい日本人」の一人なんだろうな。

 作品そのものとしては流石三谷幸喜って感じで、実に上手くまとまってる。人の心理にまでちゃんと踏み込んで作られているので、『十二人の怒れる男』とは又違った魅力があり、決してこれが単なるパロディでない事をうかがわせてくれる。

 12人が12人共に個性を発揮しているので、繰り返し観ても面白い。ワンシチュエーション作品が好きな人のみならず、広くお薦め出来る作品。

(評価:★4)

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