[コメント] クリスティーン(1983/米)
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原作未読。どうやら既読の方には物足りないものがあるようで、これを機会に原作を読んでみようと思う。
アーニーはクリスティーンがいなくても、きっとリーとは(例えば結ばれた場合)早い破局を迎えたのかもしれない。それは、アーニーが愛情を身近な恋人ではなく、実は「母性」に近いところに求めているような気がしてならないから。家族と食い違い、愛情そのものを不器用にしか扱えなかった少年の苦悩がよーく描けていると思う。あれくらい大袈裟でいい。
クリスティーンの存在。それはもう彼女が執拗に嫉妬するわ、リーやデニスの本心をわかってやれないわで大変。だから、すがりつくアーニーを上手く相手してやれなかったんだろうし彼を変貌させてしまった。そんでもって、またしても殺戮自動車として歩まなければならなかった…。こういうパートナーとして、また女性として至らない描写が全てを破綻させる。ここが、この物語最大の見所。そんなわけで、実際こんな女性がいたら、どうです?(笑)
しかしながら、想像しなければならない感情や場面は多く、細かい描写が行き届いていなかったことは悔やまれる。だが抽象的な感情はじわじわと強く伝わってきたことも事実で、なぜか、かゆいところは殆どない。
『キャリー』と比較するのはどうかと思うが、まぁ原作者が同じだからよし。それに大袈裟に描いた分、インパクトも強烈で、『キャリー』と同系統の物語に分類しても差し支えないんじゃないかな(笑)。それにシシー・スペイセクには及ばないがキース・ゴードンの変貌ぶりは見事で、終始好演。キレっぷりはかなり怖い。親友を演じたジョン・ストックウェルもキャラクターがしっかり描けている。モテるのにいじめられっ子の親友を大事にするという好青年ぶり(注:偏見ではない)はなかなか他の映画では観られない設定。彼がラストで活躍してくれるともっと盛り上がったかもしれない。
カーペンターのセンスは演出も音楽も随所で感じられたのではと思う。クリスティーンがアーニー同様に変貌する、というか自動修理(化粧?)のシーンは最高に色っぽいです。踏み潰されても踏み潰されても化粧を続けるところに「女の執念」を感じずにはいられない…。こんな作品でも自らの色を発揮する監督はお見事でしょう。
よくある話をよく描けた作品。
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