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[コメント] 元禄忠臣蔵・後編(1942/日)

うだうだと時間が流れていくような印象だった。
バーボンボンバー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







元禄忠臣蔵』は1941年の作品で、溝口健二の比較的初期の作品である。

しかし、この頃から溝口は長回しを得意としていたようで、最初のショットはたいへんに鮮烈な長回しで始まる。その冒頭は松の廊下をなめまわすように撮った映像から始まる。そして吉良上野介を映しカメラは止まる。上野介は誰かと話をしている。その話が終わり、上野介が歩き出すと後ろの戸の向こうにいた浅野内匠頭が袴を引きずりながら走ってきて上野介を切りつける。しかし、上野介は共に歩いていた人らに助けられ、内匠頭は捕えられる。ここまでがワン・ショットなのである。時間にして5分以上あるであろう息の詰まる長回し。しかし、長回しが素晴らしいのはほとんどこのシーンのみであって、このフィルムは全体が長回しで構成されているといっても過言ではないのだが、あまりそれが冴えていない。ひとつ内匠頭の切腹シーンをとっても、入場門を映してから、グーッとカメラは上昇し場内の様子を映す、などと今までに無い新鮮な撮影方法であったのだろうとは思うが、のちの溝口に見られる洗練された長回しの美とは違っていた。動きのある人物を彩度の高いロケーション撮影で撮るのが溝口の長回しの醍醐味であって、こだわり尽くされたセットの中で武士達が頭を地面につけるほどひれ伏して固まっているシーンを長回しで撮っても冗長になるだけなのである。

躍動的なシーンの排除も、それに拍車を掛けている。この作品には討ち入りのシーンが無い。しかも、話している日本語がたいへん聞き取りづらいために、何が何だか分からないまま討ち入りは終わっていたという感じが私にはした。しかも、その後は赤穂浪士たちの隠し芸大会の模様などが例の如く長回しで映され、最後までだらだらした感じで終わってしまう。内匠頭が上野介を何故憎んでいたのかという描写もなく、いきなり切りつけのシーンで始まるし、溝口はこの時代に新しい試みをしたかったのであろうが、日本が戦時中であったこともあってか、それは失敗に終わっているように私は感じた。

(評価:★3)

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