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[コメント] 青の瞬間(2001/日)

くるおしくて愛しい15歳の現実
FRAGILE

小さな島に住む中学3年の少年の話。青春映画には違いないけれど、あまり簡単な言葉では括りたくない15歳の微妙な感情が次々と描かれてゆく。

 大人になってゆくという感覚の中で芽生える耐えられない閉塞感、ここではないどこかへ行きたいという気持ち。それを小さな島に住むことと車椅子の少女で表現するのは少々ベタと言う気もするけれど、映画という限られた時間の中ではとてもうまく伝えている。  淡い恋心。そんな言葉できれいにまとめるには15歳という肉体は色んなことを知ってしまっている。そんな感情と知識と肉体の葛藤はそっと伸ばした指先の感覚を通してあまりに生々しく伝わってきて息が詰まりそうなほど。  御しきれない感情の高ぶりと肉体のやり場にもだえ苦しみ、子供でも大人でもない今の自分に焦燥を感じながら、それでも感情を爆発させることは愚かと考えつつ悪友との付き合いや暴力に身を任せる姿はとても痛々しい。

 それらを表現する主演の少年少女の演技は決して役者というほどのうまさはなく、その稚拙さは戸惑いながら生きている感じをリアルに伝えてくる。もしすべてが演技だとすれば大したものだ。

 何もかもが中途半端に思え、それがいつまでも続くように感じられる時期は、実は人生の中の一瞬に過ぎず、それ故に美しい。自分の人生を振り返ったとき、その一瞬は決してきれいな言葉だけで飾っておけるものではなく、それ故にとてもくるおしく、そして愛しい。  そんな現実を描いた作品は多いようで実は少ない。そんな作品に出会えたことを感謝しよう。  アイドルっぽい主題歌がなければほぼ満点。

(評価:★5)

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