アメリカに対比された国は、カナダ、フランス、イギリス、キューバ。どれも、医療費は無料だ。医療費どころか教育費も無料だったりする。

恵まれた国民皆保険制度を誇る日本に住む私は、当初、アメリカを笑うために見ていたのだが、すぐに、これは日本人にとっても見るのが辛い作品であると判明する。

医療費が無料の国々の失業率が高いのは、失業していても最低限の生活ができるからだ。失業時の最大の心配は病気や怪我だが、それがないだけでも安心できるし、それ以上に失業者に対する雇用促進プログラムもある。

日本人は憲法によって「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が保証されているけど、「最低限度の生活」は国によって様々なのかもしれない。

「どうしてアメリカにはできないのか」。作中で問われる疑問は、アメリカを目標に医療費削減を目指してきた、平成日本にも向けられる。

以下余談。

ちなみに私、アメリカ留学中、学校へ提出する健康診断書類を、サンフランシスコ・ヘイトストリート沿いの無料診療所で作成してもらったことがある。語学学校のゲイの先生から教わったのだけど、本当に無料だった。就業ビザを取って働いたときは、「歯医者も使えるからねー」とフルカバーの保険にも入れてもらった。もちろん、保険を使えば治療費は無料だ。そんなに悪くないと思っていた。

一方、日本の病院、僕の母は末期癌で入院していたが、ある日、外科病棟の場所が院内移動するということで母の病室も移された。看護士などの異動は明くる日。移動前までつけられていた心電図のセンサーがついていなかったので、見慣れない看護士に尋ねると「患者はお宅だけじゃありませんから！」と怒られた。それでも母は元気だったから、その夜、私は帰宅した。次の日、病院へ行くと、容態が悪化していた。酸素マスクも外れていた。そして、その日に死んだ。

サービスの面では、日本はアメリカに劣る面すらあると思っている。