コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 妖怪ハンター ヒルコ(1991/日)

夏の終わり、恋の終わり。日本の夏、金鳥の夏。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私は長年「光石研を探せ!」をやってるんですが、この映画にも出ていたか。今やすっかり有名バイプレイヤーですが、長年チョイ役マスターでしたからね。ひゃー、余貴美子も出てるよ。

塚本晋也、初の商業映画。30年の時を経てレストア&リマスターで再鑑賞。 あくまで30年記念だそうで、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』便乗でも『キネマの神様』沢田研二便乗でもなかったらしい。何にせよ、VHSでしか観たことなかったので映画館で鑑賞できて嬉しい。感謝感激。

塚本晋也の代表作と呼ばれるのは『鉄男』や最近なら『野火』(2014年)だと思いますが、私が大好物なのは『双生児』、『六月の蛇』とこの『ヒルコ』本作。『六月の蛇』はともかく、『双生児』と『ヒルコ』は与えられた企画物だと思うので、「この原作を塚本晋也に撮らせよう」と思ったプロデューサーの勝利なのかもしれません。

そんな頭のオカシイ私は、本作を「青春&恋愛映画」だと思っています。 もっとも、私の好きな恋愛映画は初代『ゴジラ』や『ガス人間第一号』なので、「怪人と恋愛」が好きなのかもしれません。『ミツバチのささやき』のアナ・トレントと一緒だな。俺のつぶらな瞳を見せてあげたい。

ヒルコ/妖怪ハンター』 は圧倒的な失恋映画です。

青春映画は「何かを失いながら成長する」ものだと私は思っています。 特に夏の映画はそう。山口百恵的に言えば「ひと夏の経験」。「喪失と成長」がセットになって、終わりゆく夏の青空を見上げる。ひと夏の経験で得た成長と何かを失った喪失感。まるで夏休みの終わりに似た感覚・・・。 私はこれを「夏休みの終わり映画」と呼んでいます。 本作は、私の思う理想的な「夏休みの終わり映画」。まあ、マイベストは森田芳光『(本)噂のストリッパー』ですけどね。夏休み関係ないけど。概念としての「夏休みの終わり映画」。

最近も多い「夏(休み)の青春映画」って、いつ頃からの傾向なんだろう? 何をもって「青春映画」と呼ぶかという問題はありますが、石坂洋次郎の時代はそんなことなかった気がする(<古すぎ)。

私の勝手な推測では、80年代後半くらいからじゃないかな?思い付くのは、本作と金子修介『1999年の夏休み』くらいだけど。 『スタンド・バイ・ミー』の影響もあると思うんですよ。根拠はないけど。 それと、バブル経済が崩壊して、時代の空気に「夏休みの終わり的喪失感」があったのかもしれません。根拠はないけど。

塚本晋也はトリッキーな作風かもしれませんが、決してトリッキーな作家ではありません。 むしろ「映画的常識人」だと思います。 本作だって、トリッキーな話にも関わらず、エンターテインメントに仕上げようと丁寧にストーリーを紡いでいます。正しいドラマツルギー、正しい起承転結と言ってもいい。 破天荒さは全然なく、映画として「あるべき所にあるべき物がちゃんと置かれている」印象があります。本作に限らず、どの塚本作品も。

私は長年、作家・塚本晋也にとって本作は「頼まれ仕事」の「商品」なのかと思っていいました。しかし、今回のレストア&リマスターに寄せて、監督自身が「愛おしい映画」と語っていたのが嬉しかった。ほんと、愛おしい映画です。

一般的にはお薦めできませんけど。

(2021.09.02 アップリンク吉祥寺にて再鑑賞)

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。