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[コメント] クローズ ZERO(2007/日)

三池崇史の『ストリート・オブ・ファイヤー』。映画が唐突にダサくなる瞬間。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







巧いんだけど「映画に対する愛情が微塵も無い」「志が低い」ことでお馴染み三池崇史。 えー、私、三池嫌いでございます。あと、矢口真里を愛しているので、監督ばかりか主演にもかなり曇った偏見の目で見たレビューになりますのでご了承ください。いや別に了承してくれなくてもいいけどさ。

つーか、三池嫌いのこの俺がコメント一番のりしちまったよ。ちくしょう。

でも三池って本当に巧いんだよ。見ていて飽きないし、乱闘シーンのさばき方なんて井筒和幸に見せてやりたいくらい。 30〜40年経ったら再評価される監督だと思うね。 なにしろ多作だし、そこそこ面白い娯楽作を仕上げる職人監督ではあると思う。 鈴木則文みたいに名画座で特集上映されたりして。

でも映画に対する愛情も相変わらずホントに無いの。映画が薄っぺらなの。ストーリーが薄っぺらなんじゃなくて、映画が薄っぺらなの。 例えば三池映画でダブルミーニング的なものは一切見たことがない。ハッとするような瞬間を見たことがない。

この話だったら、例えば、一発のパンチに、主人公の感情だとか想いだとか、そうしたものが乗る瞬間が一度くらいあってもいい。 手術中の高岡蒼甫※も「一緒に闘っているんだ」なんて台詞よりも、最終対決を照らす夕日を病室の窓から見ている描写、なんてのがあった方が意味がある。だって共通の親友なんだろ?二人で見る夕日ウンヌンの伏線張ってんだろ? そういう細かい設定を大切にしようよ。

で、終いには何をやりだすかというと、様々なサブエピソードが最後の大乱闘と重なり合うの。 いや、それは常套手段で、逆にそうならなかったら怒ってるところなんだけど、何がヒドイって、乱闘スローモーションになって、黒木メイサが歌う(本人が歌ってるのか?)のバラードが流れちゃうんだぜ。

うわっ、ダッサ。

それまではそこそこカッコイイんですよ。 いいなと思う音楽もあるし(エンディングロールを見る限り浅井“ベンジー”健一の作品だと思う)、そこそこ『ストリート・オブ・ファイヤー』風なんですよ。いやもちろん「三池美学」みたいなポリシーはないんだけどさ。 ところがこのクライマックスで一気に「ただのアイドル映画」に成り下がる。 わ、本当に鈴木則文と同じだ。 そうかあ、ドカーン!って映画のちゃぶ台ひっくり返す代わりに、今回はそういう手できたかぁ。

結局、この映画に、表面上のストーリー以外の物語を読み取ることはできない。 強いて言えば、「これからの日本映画を背負う期待の若手男優頂上決戦!!〜古波蔵恵達vs矢口の元カレ、天下を取るのはどっちか!?(あおいタンの旦那は途中リタイヤ)〜」ってことくらい。小栗旬はカッコイイですよ。ええええ、カッコイイですとも。

20年前に石井聰亙が撮るべき題材だったな。ああいうパワーはない。 つーか、お子様映画に目くじら立てるなよな。

余談

黒木メイサの歌については、よく考えたら『黄泉がえり』のTBSが制作した映画だから、柴咲コウの二番煎じを依頼されたのかもしれないな。

※追記

ご指摘をいただきました。入院してたのは高岡蒼甫じゃなくて桐谷健太なんだよ!と。 おっしゃる通りです。最近の若いモンは見分けがつかねーんだよ!

(評価:★3)

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