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[コメント] パプリカ(2006/日)

音は素晴らしい。Mad Houseモノとしては映像は並。ストーリーは難解。大人エスパー魔美な主人公キャラデザインが痛い。鑑賞後に残ったのは残念感。
miyabi108

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







筒井氏の原作は読んだことがなく、他のレビュアーの皆様のようにベンチマークはできないので、映画単体の感想。

まず、音の表現は素晴らしい。もうそれだけでいい。誇大妄想にとりつかれた大名行列の時の、よくわからないけどどんちゃん騒ぎで、ちょっと不安になるくらいの明るさと奇妙さ。 テーマソング?の平沢進の「白虎野の娘」も好選定。 夢の自己中心感と、非現実感、明るさ、不安感がうまくミックスされているようで、作品全体のイメージを効果的に強調していたと思う。この選定本当に素晴らしい。

声優陣も好演。林原めぐみがパプリカと敦子を演じ分けているところや、エロオヤジは江守徹だったのかという面白さ。小山内が『攻殻機動隊』のトグサと同じ声優なのが楽しかった。悪役だったのね。演技上手いなぁ。

夢の映像表現も緻密でおどろおどろしくて艶やかで素晴らしい。さすがMad Houseだと拍手を送りたい。

さて、ここまででレビューを終えたとしたら、かなりの好評価なのだが、残念ながら音以外の内容にも踏み込まねばならない。 まず、主人公のキャラクターデザインが雑。同じ安藤雅司氏がキャラクターデザインを担当した『ももへの手紙』も、キャラクターデザイン以外の表現手法が優れていて残念に感じたが、パプリカもそれと同じ残念感が漂っていた。 夢の中に出てくる、あるいみ理想の女性像なのになんの因果であんなダサい髪型? エスパー魔美が大人に変身したのか?カツラか? ファッション誌も読んだことないままか? オレンジの柄なしTシャツをジーパンにイン、肌色の布ベルトにサンダル、、、なんだこりゃ。夢のなかとはいえ、よくバーの出禁にならなかったなと。他の映像表現が素晴らしかっただけに、際立って主人公がダメでした。

次にテーマ。元の小説は長編だったと聞くし、いろんな工夫をしていたのかもしれない。が、映画を見た限りでは、夢テーマの扱いは陳腐。機械で夢に入ったら逆に入った人も危険になって、、、ってどんだけそのまんまだよ!『インセプション』のように夢の中での夢、とか、『マトリックス』のように既にそれ自体も人vs機械の戦いに敗れつつある構図で、など、なんかのひねりが欲しかった。あまりにも単純。はー、そうですか、という。。

ストーリーがよかったら、それでももっと入り込めたのかもしれない。でもいまいち入り込めなかった。その理由は現実描写の少なさかなー。研究室以外描かれないし、中途半端に扱われた刑事の回想シーンも、なんとなく夢を追って映画を作ったという、、はあ、そっすか。。という感想。 途中から敦子が天才デブのことが好きだと気づいて、勇気を振り絞って? デブを救おうとするのだが、それまでの伏線や、葛藤させるだけの否定的感情の描写も薄かったので、あー、デブが好きだったのね。いいんじゃん、別に。と思ってさらっと流してしまった。

実は理事長が男色家で、研究員の一人を抱き込んで、というオチまでは見えなかったが、妄想で触手だらけで迫ってきて、それをさくっと退治できたのを見ても、ああー、そろそろ映画も終わりだしね。うん。終わらせるんだね、いいんじゃない。程度の感動レベル。 なぜ半透明の裸の巨人女性が出てくるのかもようわからん。度々裸が出てくるが、単に書きたかっただけ? ようわからん。ていうかヒロイン可愛くないし。

ではどうすればよかったのか? ・音楽・効果音・声優はこのままキープ。 ・キャラクターデザインは、安藤雅司はあわない、、と思う。下村一を抜擢するんじゃないかな。Mad Houseでなく Production I.Gですが。髪型はもっといかにもアニメですみたいに振り切るかなー。性格設定は、敦子が計算高く・冷徹・分析的なので、もっと破天荒・直感的にするべきでは? 年齢も敦子と同じにする必要はないと思う。 ・夢というテーマをキープするとしたら、リアルの描写の尺の割合を倍くらいに伸ばす。現実にいれば安心/寝なければ、という印象をもっと徹底的に前半で強調しておいて、前半ではいざとなったら現実に逃げることを切り札に相手を追い詰めておいて、それがどこからから安全地帯をなくすようなギャップが欲しい。 ・そこに混ぜるストーリーとしては、刑事の本当の夢の発見と、敦子の天才デブへの思いという2つを追うのではなく、どちらか一つに絞る。まっとうに考えれば前者を割愛。いろいろ抑圧してうまくやってたと思っていたが、もう一人の自分である、直情的なパプリカとの精神的な統合によって人間としても一回り成熟する、というストーリーにするかな。

まとめると、音と映像表現は良かったのに、主人公キャラデザインがだめで、その上ストーリーもてんこ盛りにしようとしすぎてダメで、だから夢と現実の混同っていうテーマも陳腐なままで、刑事が自己発見したり、ヒロインが愛情に気づいたり、エロ妄想オヤジが倒されたりするんだけど、どれも中途半端で「ふーん。」ってなる映画。

(評価:★2)

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