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[コメント] ビジターQ(2000/日)

三池崇史渾身作――再評価必死!
ExproZombiCreator

娘と援交する父、売春したお金で覚せい剤を買う母、いじめられっこで内弁慶なDV息子。

数年前にこの作品を観た時は、あまりのむちゃくちゃな映像の数々に圧倒されました。エンケンの怪演は光っていました。ただそれだけのエログロ作品としか思えませんでした。事実、やけに長い死姦シーンなどは三池マニア向けのサービス・カットに見えます。

しかしここ最近、今作の内容を思い出してみますと、一概には笑えないものがあります。風刺作品特有の誇張表現をのぞけば、作品内における出来事が、実際に起こり得るのではないかと思えてくるのです。一例を挙げます。「いじめが過激化。クソガキが家にまでやってきて、部屋の中に花火をぶちこむ。父親は見てみぬふりをしつつ、勝手に入れた居候と仲良く飯を食っている」誇張を取り除けば、予言めいたものの存在を感じませんか? ちなみに私はゆとり教育時代に、学校の教室内で花火遊びをしつつ、教師から注意を受けなかった人物を見た事があります(交友関係はありません)。

核心の部分はこうではないかと思います。「崩壊した家庭における父親は役に立たない。母親が立ち上がらなければいけない。だがいじめ問題は解決が極めて難しく、お母さんが覚醒剤を打ってぶち切れるくらいの姿勢が必要である。クソガキとはまともに話し合っても無駄で、ブチ殺してやるくらいの敵意を持って対峙すべきだ」と、こういったものが汲み取れます。性善説から少しずつ性悪説にシフトする日本人は、そろそろこの作品の内容に追いつく頃ではないかと思います。

オリジナル脚本であり800万円という低予算を考慮すると、佳作以上の評価を受けて然るべきです。もともと三池マニア内限定で評価の高い作品でしたが、今作の脚本家は見事に出世したという事実もあります。

それに、素晴らしい風刺映画を思い出して下さい。『ファイトクラブ』『華氏451』『時計じかけのオレンジ』『1984』これらは全て原作つきです。今作のように近年の社会問題を扱っていて、なおかつ娯楽性、商業性を兼ね備えたオリジナル脚本作品が、それほど多く存在するのでしょうか?

(評価:★4)

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