ティム・バートンらしくない、しかしどこかでバートンらしい、不思議な映画。 私見では、ティム・バートン最高傑作。 キャスティング、音楽という点では全く非の打ち所がない。

エドワード・ブルームという人物をアルバート・フィニーが現在を、ユアン・マクレガーが回想を演じている。 この点がティム・バートンらしくなかった。 十八番の特殊メイクを使わなかったのは、この話にメリハリをつけリアリティをもたせるためと、バスタブにもぐるシーンがあったためだろうか。

現実を誰よりもよく知り、厳しさを知っていた父親が、体験談を“脚色”して「現実の厳しさ」を息子に伝えたかったのだ。後から考えるとエピソードの全てにメッセージが込められてるのがよくわかる。 それがクライマックスで、父の死に方を息子が語るくだりはかなり良い。

父親の葬儀のシーンでいくつかの話の真偽がわかる。 シャム双生児のアジアの女性は実は普通の双子であったり、巨人がそんなに大きくなかったり。

現実の話なんてこんなもんだ。 『シザーハンズ』以来、ティム・バートンの作品からかもし出される「つまらない現実の中にある僅かなファンタジー」が、この『ビッグ・フィッシュ』ではより濃く出ていた。 この点においてティム・バートンらしさが出ていたと、私は思う。

かなり伏線が張られているので、もう一度見たい作品。