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[コメント] THE WAVE ウェイヴ(2008/独)

知的な恐怖を直感的に味わえました。
炭酸飲料

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







歴史的な知識も心理学的知識も乏しい自分に、ファシズムの恐怖をすこぶるわかりやすく教えてもらえました。ありがとうベンダー様。

なにしろ、事の発端に「悪意」が無いのが怖い。

先生が「おもしろい授業をしてやろう」と提示し、生徒たちの反応も上々とあっては、 教授冥利に尽きるといったところでしょう。

生徒達も「なんだか変わった授業だな」と好奇心旺盛に授業にのぞむ。 反応の悪い生徒も中にはいるが、興味がなければ授業を受けなければいいだけ。 授業に残りつつも、その内容にいぶかしむ生徒がいたら、「おいお前空気を読めよ」と。

かくして賛同者だけが残り、反抗者は排除するという「組織」があっという間に完成してしまった。

「いつから、どこからオカシくなった」って話しじゃないんですね。 最初から、ずっと、おかしいところなんてない。非常に納得のいく流れなのです。 だから、怖い。

白シャツの「組織」のなかで、一人だけ私服の生徒がいるシーンなんか、 「空気を読めよ」という言葉が実体化する瞬間に思えてヒヤリとする。

ただまぁ、授業の外での生徒たちの行動については、納得がいく、とまではならないかも。ドラマだねって感じ。特に気弱な青年は突飛な行動が多く、「生活環境のせいもあって流されやすくてね」となんだか言い訳されてる気がします。

百聞は一見にしかず。言い聞かせるより実践した方がわかりやすい、という授業方針は間違っていないと思うし、好感が持てる。ただ、その題材が「独裁」だったということだけ。それだけで、生徒達の青春にぬぐえることができない傷をつくってしまった。

悪意も何も無く始まった授業が生んだこの悲劇は、いわば「実験中の事故」のようなものなのだろうか。

ともかくこの映画、集団心理の危うさをとってもわかりやすく教えてくれます。

なにより「この授業、ちょっと受けてみたい」と思った自分が怖かったり。

(評価:★4)

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