[コメント] ウルヴァリン X-MEN ZERO(2009/米)
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これもまた商業的な量産体制が生み出したハリウッド娯楽映画であり、安定感のある王道作品の一つである。X-MENシリーズの外伝として大いに満足できる出来だ。
いつも行動を共にするヒュー・ジャックマンとリーヴ・シュレイバー兄弟が駆け抜ける、メインクレジットのアメリカ戦史の見せ方が格好いい。「プライベート・ライアン」や「プラトーン」といった映画を連想してしまう。
ミュータントを寄せ集めたチームXは、航空機内での野郎共の減らず口から始まる定番スタイルであるが、キャラが立ったメンバーの会話は十分に面白い。ラゴスでの急襲シークエンスなど、台詞と間の取り方にセンスを感じる。二刀流のライアン・レイノルズを筆頭とするアクションは、A級とB級の境界上を微妙に綱渡りするサービス精神に溢れている。
チームがばらばらになる経緯が釈然としないままに、6年後に話が飛んでもなお目が放せないのは、ジャックマンの存在感とカナダというロケーションの清清しさ、恋人リン・コリンズとの平凡な幸福感の描写が丁寧であるお陰だ。コリンズはシーンを重ねるほどにどんどんよくなっていく。
やはり、こうした基本的な芝居どころを押さえているからこそ、トータルとしての重厚さが出ているのだと思う。ジャックマンがアダマンタイトを注入されるシーンの、その仕掛けのバカバカしさに反して、水槽を取り囲む脇役端役の芝居のトーン、間の取り方、編集のリズム、そうしたところにきめ細やかな配慮がある。
滝落ちという定番スペクタクルや農家の老夫婦とのやりとりにも、アメリカ映画らしさがある。いずれにしても大陸的な開拓者精神を感じさせ、ついつい憧れてしまった。
終盤の多少強引な展開も、コミカルな味付けがあってこれはこれでいい。自分の足で立つ健康なパトリック・スチュワートの姿が見られたのも感激だ。
エンドクレジットの最後にエピローグがあるのだが、imdbによるとこれには二つのバージョンがあるそうだ。一つは、バーで、自らの記憶に思いを馳せつつ酒を飲むウルヴァリン。もう一つは、死んだと思われたウェイドの手が、切断された自分の首を探り当てるシーン。どちらになるかは見た劇場によるランダムだそうだ。私が見たのは後者だった。
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